2012年7月3日火曜日

音楽ビジネスの発展を妨げる著作権法の仕組み

違法ダウンロードを刑罰化したり、ある種の私的複製を禁止したり、いろいろと著作権法をいじってますが、それは著作権法が目的とする「文化の発展」に寄与してるんでしょうか?

そんなの正直言って分からない。科学の実験と違って、禁止した場合としない場合で、その他の条件を完全に揃えて試すわけにいかないし。それに社会の状況は常に変化している。

でも、著作権法自体に、それを明らかに妨げる仕組みが入っているとしたら…

どうもそうなんじゃないかってことに気づきました。音楽ビジネスが発展しない仕組み。

一応私、著作権法に関する問題はずっと気にしてるつもりですが、これまで聞いた覚えがないので、書いてみます。(とは言え、最近記憶力に自信がない。忘れてるだけだったりして…)

2012年7月4日補足:以下、「原盤権をレコード会社に渡す」などの表現は、「原盤権をレコード会社が持つことにする」などと読み替えて下さい。原盤権は、録音した時に発生する権利で、録音前に著作者や実演家などが持っているものではないからです。詳しくはコメントでの議論をご参照下さい。

特許はなぜ問題になってないんだろう


突然ですが、特許の話です。

著作権も特許権も、まとめて「知的財産権」と呼ばれたりする。だから著作権と特許権は似たようなものだ。

いいえ、それは大間違いでした。実は著作権と特許権は、ほとんど正反対の効果を持っています。音楽ビジネスに関しては特に。ってことに気づいた。多分。

特許は、簡単に書くとこんな制度です。(参考:特許法

いいアイディアを思いついた人が特許を取り、特許権を持つ。特許権者はそのアイディアを実現して(特許を「実施する」と呼ぶ)お金を儲ける権利を一定期間独占します。

特許権者は、特許を実施する権利を他人に与えることができます。与えるのは「実施権」です。たとえばあなたがとても役に立つ発明をして特許を取ったら、メーカーにその特許を実施してもらってお金をもらうこともできる。

もしも複数のメーカーが、あなたの特許を実施したいと言ってきたら、対価(特許使用料)の額など、一番条件のいいところに実施権を与えればいい。ここでメーカーの間に競争が働きます。もっとも低コストで、もっとも利益を上げられるメーカーが、一番いい条件をあなたに提示してくるでしょう。

実施権の与え方も、どこかのメーカーに専用させて高い使用料を取るか、いくつかのメーカーに与えるか、その期限はどうするか、契約でいろいろにできる。(参考:溝上法律特許事務所 事務所報 論説~特許権の実施契約について~

さて、著作権をめぐるごたごたは長々と続いていて、コンピュータやネットが一般的になってからは普通の人の生活を刑罰で脅かすまでになっています。

しかし特許については、ビジネスモデル特許が一時期話題になったくらいで、大して問題にもなってません。それどころか、発明は今でも私達の生活を豊かにし、そこにはきっと発明を実施するための手段としてコンピュータやネットが役に立ってるはず。

どうしてこんな違いが出るんだろう。

音楽に関わる著作権


現在の音楽ビジネスの主流は、まず演奏を録音して、それを複製するなりネットで配信するなりして儲ける、というやり方ですよね。ライブもあるけど、儲かる額はだいぶ少ないはず。あとは、楽譜を売るとか、音楽を演奏するソフトウェアを売るとか…これらは主流にはとりあえずならなそう。

というわけで、音楽で儲けようとする人は、何はともあれ音楽を演奏して録音し、CDや音声データ(著作権法の用語で「レコード」)にする必要がある。話を簡単にするために、歌詞のないインストゥルメンタルの曲だとします。ここで少なくとも3種類の人が関わってくる。


それぞれの人が、例えばCDの譲渡についてどんな権利を持つかと言うと。

  • 作曲者:著作物を、複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する(第二十六条の二
  • 演奏者:実演を、その録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する(第九十五条の二
  • レコード製作者:レコードを、その複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する(第九十七条の二

「専有」って分かりにくい。それぞれが個別に権利を持つってことらしいです。

この3つめの権利、原盤権に含まれるわけですが、この権利のおかげで、レコード会社は自らがレコード製作者となって原盤権を得ることで、いくらでもCDを作って売れる。

音楽業界では当たり前の話なのかな。でも、原盤権をレコード会社に渡さないアーティストもいるらしいし。

特許と比較してみる


特許では、発明者が特許権を持ち、実施者に実施を許すことで、実施者間で競争させることができる制度になっています。それによって、発明を促し、発明の有効利用を図っている。同じことが音楽で起きるか見てみます。

文化を作るのはまず創作者です。ここでは作曲者だけでなく、演奏者も創作者に入れることにします。(同じ曲をうまい人が演奏した場合と下手な人が演奏した場合では文化的貢献は違うと考えて。)そして、創作者に利益を与えることで、創作を促し、創作物の有効利用を図る、と。悪くないよね。

著作物に関しても、特許における実施者と同じように、創作者の創作を、実際に役に立つ形にする人が必要だ。具体的には、演奏を録音し、配布する仕事をする人が必要。それがレコード会社だ。発明者と実施者の関係になぞらえて、創作者と実施者(=レコード会社)という関係があると言える。

ここで、特許と著作権の大きな違い。特許制度が発明の内容そのものを保護するのに対して、著作権制度は表現されたものを保護します。だから上に書いたように、音楽を売るには何はともあれ演奏を録音しなきゃならない。

しかし、録音した時点で原盤権をレコード会社に渡すと…

著作権法は、著作者や実演家と分けてレコード製作者を規定しています。レコード製作者が別の人であるとは、原盤権をその人に渡すということ。著作権法は、原盤権が著作者でも実演家でもない「レコード製作者」(レコードを複製して公衆に譲渡する権利を与えているので、きっとレコード会社)に渡されることを想定している。

…原盤権をレコード会社に渡すとどうなるか。その録音(レコード)の複製権や譲渡権はレコード会社が専有することになる。だから、同じ録音を他のレコード会社なりネット配信会社に渡して売ってもらうことは、著作者にも実演家にもできなくなる。

つまり、特許制度とは違って、実施者間の競争が働かない仕組みを著作権法自身が規定してしまっている

例えて言うならこう。あなたがとてもいい構造の自転車を発明した。その発明を実施してもらうために、設計図をメーカーAに渡してステンレスで作って売ってもらった。そのうち科学技術が進み、カーボンファイバーが得意なメーカーBが現れたので、そこに作ってもらおうとしたら、設計図をメーカーAに渡した時点で特許権も渡したことになっていた…

これでは、よりよい材質で特許は実施できない。技術は進まないし、消費者への特許の恩恵はメーカーAが商品を作った時点で止まってしまう。

同じだよね。あなたがとてもいい楽曲を作って演奏した。それを録音する時に、レコード会社に原盤権を渡して、CDにして売ってもらった。そのうち技術が進んでネット配信ができるようになった。ところが録音を複製したり配信したり譲渡したりする権利はレコード会社が持っている。あなたの録音は、その会社が考えを変えるまで、CDでしか売られない。いや、売る気がなくなったらどんな形態でも売られない。

録音にお金がかかるから録音した人に著作隣接権を与える。理由としては妥当な気もします。でも特許に置き換えてみて。特許の実施にだってお金がかかる。青色LEDを製造するのにどれだけの金がかかるか。それを低コストで利益が出るように実施できる人が、実施権を得て、利益を得て、その利益を発明者に還元するんだよね。音楽でそれができない理由なんてあるのかな。

作曲者や演奏家が録音についての権利を保持するという前提で、もっとも良い条件で録音させてくれて、一番利益を上げてそれを作曲者や演奏者に還元してくれる会社が、著作権を「実施」する権利を作曲者や演奏家から託される。CDよりも利益の上がる配信方法があれば、それを採用する会社が有利になる。これなら競争が働くんだけどなぁ。あるいは競争によって、安く良い録音をさせてくれる業者と、低コスト高利益で配信する会社というように、分業が進むかも知れない。

著作隣接権の別の理由として、レコード会社に権利を与えることによって、さらなる利用が楽になり、普及に貢献するのだとも言われます。ちょっと前にあった、電子出版を普及させるために出版社に著作隣接権を与えるかどうかの話のときもこれがポイントになってた気が。

でもほんとかな。著作物はさまざまな利用方法が可能なはずで、特定の一社に排他的な権利を与えるなら、別の利用方法が阻害されるんでは。てかそれを我々は音楽について目の当たりにしてるのでは。

まとめ


今回の話では、作曲者・演奏者・レコード会社の三者だけで考えました。実際の音楽ビジネスでは、いろんなプレーヤーの役割や権利が複雑に絡み合ってるので、単純化しすぎと言われるかも知れない。でも、そこに現れるプレーヤーそれぞれの権利を著作権法は定めていて、それらの権利を与える前提として著作権法が想定しているビジネスの大枠は、確かに上に説明した通りだと思う。すなわち:

特許が実施者間の競争を促す制度になっているのに対して、著作権法は逆に著作物を特定の実施者(レコード会社)に独占させるようになっている。だから競争が起きず、同じ著作物を使った新しい技術の利用が阻害され、コスト削減やより役に立つ使い方ができずにいる。

とりあえず音楽に限ってはこういう観察が可能だ、というのが今回書きたかったことです。

違法DL刑罰化に関連して、コンテンツ産業が技術の進歩に合ったビジネスができてないって批判を聞くけど、その大きな原因のひとつが、競争を妨げている著作権法自身の規定じゃないか、と。

これが正しければ、「レコード製作者」に現在のような著作隣接権を与えているのは、著作権法の目的である「文化の発展」を逆に阻害していると言えます。

もちろん原盤権を渡さない契約も法律上は可能だけど、きっと力関係で、原盤権を渡す契約にサインせざるを得ないんじゃないかと推測してる。だったら著作権法は弱い方を守らなければいけないのでは…?

ちなみに著作権法は、放送事業者にも同様の著作隣接権を与えています。てことは!

関連サイト

クリエイティブビジネス論|著作権は20世紀エンタテイメント産業の副産物〜違法ダウンロード罰則化が成立しちゃった〜
この↑記事の重要な指摘は、(私の言葉で書くと)「著作権には、創作者の権利と、複製者の権利がある。いま問題になっているのは複製者の権利の方ではないのか?」。

著作権がもともと印刷業者のための制度だったのは本で読んで知ってたつもりだったのに、これ読んで初めてその重要性に気づかされました。そして、そして自分自身、あまり納得できずに20年ほども付き合ってきた著作権の意外な実体が見えてきた気がしてる。

今回の話はその一部です。他のこともそのうち書ければと思ってます。まだまだ勉強中。いかんせん全体が巨大で現実と絡み合ってて…今回は何とか切り出してまとめたって感じ。

今回の話の冒頭、「特許権と著作隣接権が正反対の効果」と書くべきだったかも知れないけど、いつか全体像を書く日のために、あえて「特許権と著作権が正反対の効果」と書いたままにします。

関連書籍など

福井 健策:「著作権とは何か」、集英社新書、2005年
著作権法専門の弁護士さんで、著作権の基本をたくさんの実例を交えながら丁寧に説明しています。
福井 健策:「著作権の世紀」、集英社新書、2010年
同じ著者による5年後の本で、著作権をめぐる状況の変化と今後について、やはり豊富な実例を使って分かりやすく解説しています。著作権そのものの説明はほとんどないので、ある程度わかっている人向け。
岡本 薫:「著作権の考え方」、岩波新書、2003年
元文化庁の著作権専門家による、著作権とそれに関連する状況の解説。新書にしては重厚な内容で、専門書に近いくらいの読みごたえがあります。「中の人」視点で書かれた、日本や他国(特にアメリカ)の動きや、著作隣接権の話が興味深い。著作隣接権は、単に政治力の強い業界に与えられてるだけって、ぶっちゃけすぎだ(笑)。でも今回私が書いたことと深く関係しそう。
山田 奨治:「〈海賊版〉の思想」、みすず書房、2007年
情報系の大学の先生による、著作権の起源に関わる論争を歴史として描いた本。読み物としても楽しい。
山田 奨治:「日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか」、人文書院、2011年
同じ著者が、近年の著作権の厳罰化の流れを批判的な視点から解説しています。ダウンロード違法化が決まった私的録音録画小委員会の様子を議事録から再現しているのが面白い。津田さん大活躍。
津田 大介:「だれが「音楽」を殺すのか?」、翔泳社、2004年
その津田さんが、レコード輸入権、CCCD、ファイル交換、音楽配信サービスなど、いくつかのトピックについて音楽業界の状況と問題について書いた本。インタビューや年表などもあり、脚注も見やすい配置で、内容だけでなく本全体のデザインでも楽しませてもらった。ちなみに私にとって初 tsuda がこの本…って、どうでもいいか(汗)。あとがきに、10年後には笑っていられるといいって書いてあるけど、まだまだ我々は苦しみそうです(苦笑)
安藤 和宏:「よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 4th Edition」、リットーミュージック、2011年
音楽著作権に関係する業界の実際を、細かい項目に分けてマンガ入りで説明している。本はとても分かりやすいが、業界と権利の複雑さに目が回る。主として音楽で仕事をする人向けに書かれた本で、法制度については批判なく中立的。私が読んだのは 3rd Edition だけど、この新しい 4th でもきっといい本と思う。ちなみに実践編もある。
竹田 和彦:「特許がわかる12章 第6版」、ダイヤモンド社、2005年
特許に関連するビジネスをする人向けの実用書。リファレンス的に使ってるので通読はしてないけど、各項目は実例込みで分かりやすく説明されている。
あと、読まなきゃいかんかなぁと思ってるのがこれ↓。
中山 信弘:「著作権法」、有斐閣、2007年
しかし自分、そこまでしてどうすんのという気も(苦笑)

7 件のコメント:

  1. ちょっと間違っている。

    >しかし、録音した時点で原盤権をレコード会社に渡すと…

    音楽を作った人(著作者)がレコード会社に原盤権を渡し、そのレコード会社がダウンロード販売をしなくて著作者が困っているのなら、

    著作者は自分で新しい原盤を作り、自分でダウンロード販売すればいい。

    今の音楽業界でそれが出来ないのは、著作者が著作権を売り渡しているから。

    (著作者と音楽出版社の間で、音楽著作権譲渡契約というのを交わすことが多い。この契約を締結すると、著作者は著作権を束なしたことになる。代わりに、音楽出版社がプロモートしてくれたり、様々な場所で楽曲が使用されたときに使用料の徴収代行をしてくれるなどのメリットがある)

    もうちょっと勉強された方がよろしいかと。

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    1. いや、全くその通りです。原盤権を渡さなければいい。しかし著作権法は、原盤権を、作曲者でも実演家でもない誰かに渡すことを想定していますよね? そうでなければ原盤権(著作権法の用語では、レコード製作者の著作隣接権)なんてものを著作権法で規定する必要はないと思うんですが。

      原盤を作るのが大変で、それが創作物だと私は見なしています。それが、できた瞬間に創作者のものでなくなるために、競争が機能しなくなる。そういう観察なんですが、間違ってますかね…?

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  2. 間違ってますよ。

    ※前提として、著作者と著作権者は違うと言うことくらい分かってますよね?

    ※アンド、以下はややこしいのでよく読んで下さい。


    ・音楽を録音する=原盤1が作られる

    ・原盤1を作り金を出したのは誰か=レコード会社=原盤1の原盤権はレコード会社に帰属する。

    ・レコード会社は原盤1をCDでしか売らない。

    ・腹を立てた音楽の著作者が、原盤2を自腹で作る。

    ・原盤2を著作者自らダウンロードで販売する。

    これは何の問題もない行為。但し、原盤1を作る際に、原盤1の制作契約で(著作権法ではない)、著作者とレコード会社の間でレコード録音の日からxx年間は著作者はレコード会社に無断で原盤を作ることができない、となっていたらその期間中は原盤2は作ることが出来ない。

    ※ところが、日本に限らず世界中の音楽業界で発生しているのは別の話。

    ・レコード会社が原盤1の制作費を出す際、原盤契約の他に、音楽出版会社と「著作権譲渡契約」を締結するよう、著作者に要請する。

    ・著作者が作った音楽の著作権を音楽出版会社に譲渡すると、当然ながらその音楽の著作権は音楽出版会社のものになり、著作者は(自分が作った歌なのに)その音楽を自由に利用することが出来なくなる。

    ・当然ながら、著作権譲渡後は、著作者といえども原盤2を作る権利はなくなる。


    ※つまり、貴殿は原盤権を誤解しています。

    原盤は、著作権者の許諾があれば、何度でも作ることが出来ます。

    原盤権を渡したから、というのがもんだいなのではなく、「音楽著作権」を音楽出版会社に譲渡してしまったことが問題なのです。


    ※1985年にビートルズの楽曲をマイケルジャクソンが買ったと言うニュースが流れました。

    ビートルズ(特にレノン&マッカートニー)がデビューした頃、ビートルズは著作権についての理解が無く、マネージャーや取り巻きのレコード会社に言われるがまま、著作権を音楽出版会社に売ってしまったから、このような結果になってしまったのです。

    「ノーザン・ソングス」という本は、音楽著作権が、著作者の意向を無視してどのように売り買いされてしまうものなのか、ビートルズという最も偉大なアーティストの実例を使って解説している良書です。

    音楽著作権の複雑さを知りたければ、一読をお奨めします。


    ※私は以前、アニメの製作幹事をやっていて、主題歌やサントラなどで音楽著作権に詳しくならざるを得なかった者です。

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  3. 専門家の意見を聴けて大変うれしく思います。ありがとうございます。是非これからもお付き合い下さい。よろしくお願いします。

    私が書いたコメントが分かりにくかったようで、論旨が伝わっていないようです…すみません。でも、原盤権については分かっているつもりです。例えば、「原盤権をレコード会社が持つことによって、そのレコード会社がその音楽の原盤を作る権利を専有する」などとは思ってません。

    お返事を書いてたのですが、長くなりそうなので、また明日書きます。

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  4. >音楽業界では当たり前の話なのかな。でも、原盤権をレコード会社に渡さないアーティストもいるらしいし。


    著作者(作曲者)も著作権者(作曲家とは限らない)も、原盤権はもっていません。

    著作権者(著作者とは限らない)がもっているのは、原盤を作ることを許諾する権利=音楽著作物の利用を許諾する権利、です。

    原盤権は、原盤が完成してから発生する権利です。


    通常、原盤権の帰属先は、著作権者(著作者とは限らない)とレコード会社の間で原盤製作契約を交わす際、契約条項で決められるものです。

    そして通常の商習慣では、原盤制作費を出した側が原盤権を所有します。


    >原盤権をレコード会社に渡さないアーティストもいるらしいし。

    この場合、アーティストが原盤権を渡さないと強く主張したら、レコード会社は「だったら自分で原盤作って下さいね。完成度が高くて売れそうだったら、私たちがCD発売します(原盤利用許諾契約を結びましょ)」となります。

    例外的に、売れたアーティスト(ミュージシャン)が、
    レコード会社「原盤を作りましょう!」
    アーティスト「じゃあ、俺の自宅にあるプロユースのスタジオで録音しよう」
    レコード会社「分かりました、その分コスト抑えられますね」
    アーティスト「うん、だからスタジオ費に相当する部分の原盤権を俺にくれ」
    レコード会社「じゃあ、我が社が70%、アーティストさんが30%でどうですか」
    アーティスト「分かったOK!」

    なんてことは、あり得ます。



    >文化を作るのはまず創作者です。ここでは作曲者だけでなく、演奏者も創作者に入れることにします。

    現状の著作権について議論するのなら、これは間違いです。

    実演家は創作者ではありません。あくまで実演家です。(主張の趣旨は分かりますが)


    >現在の音楽ビジネスの主流は、まず演奏を録音して、それを複製するなりネットで配信するなりして儲ける、というやり方ですよね。ライブもあるけど、儲かる額はだいぶ少ないはず。

    大物過ぎて参考にならないかもしれませんが、マドンナは

    49歳現役で2006年から2007年にかけて7200万ドル(約76億円)を稼いでいます。Forbes誌によるとコンサートツアーでは2億6千万ドル(約275億円)も収益をあげており、さらにアルバムの売り上げ、H&M(エイチ・アンド・エム)などでのファッションの売り上げ、NBC局との契約によるロンドン・ウェンブリー・スタジアムでの放送など、稼ぎぶりは見事なものです。

    (らばQの記事より丸ごと引用)

    稼げる人は、ライブでも十分な稼ぎを得られます。

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    1. 著作者と著作権者、そして原盤権のご説明、ありがとうございます。助かります。関連書籍として挙げた本で読んだ程度ですが、私も大体のところは知っているつもりです。

      「原盤権を渡す」という表現は、録音した際に誰がレコード製作者となるかを関係者が決める際に、著作権者でも実演家でもない人をレコード製作者とする、という意味で用いました。不適切な用法で混乱を招いたことはすみません。誤解を減らすように本文では補足しておきます。ご指摘ありがとうございます。

      観察の過程で、私が原盤権なる権利に疑問を持つようになったせいで、結論を先取りする表現をしてしまったようです…


      さて、前回いただいたコメントに対しては、ふたつお返事します。

      ひとつめ。音楽業界の用語での「原盤権」は、著作権法において「レコード製作者の権利」として定められている著作隣接権です。本文でもそのように扱っています。この理解は間違っていませんよね。

      ふたつめ。私は本論で単純化して著作者=著作権者という(多くの読者が想定するだろう)条件で書きました。音楽出版会社というプレーヤーを出さなかったのはそのためです。(私は自分で読んだ本から「音楽出版社」という用語を普段は使いますが、ここでは天野さんに合わせます。)しかしながら、著作者が著作権を音楽出版会社に譲渡しようがしまいが、著作権法が規定している原盤権によって競争が阻害されるという観察は変わりません。

      ですから、ビートルズの例をお引きになった、著作者が音楽出版会社に著作権を渡してしまう問題は、今回の私の話とは直接は関係ありません。(もちろんそれは重要な問題だとは思います。)


      今回いただいたコメントについて。原盤権が存在する現状で、このような事例や可能性がある、というご説明だと思います。現行著作権法のもとではもっともだと思いますし、情況をよくご存じの方の説明は本当にありがたく思います。

      他方、私は音楽業界の実情には詳しくないことは自覚してますので、本論は、著作権法そのものが市場をどのように規定するかにできるだけ限定して述べました。音楽出版会社が出てこなかったのはそのためです。どんなプレーヤーやどんな契約条件が市場で現れるにせよ、それは大枠として法律が定める範囲内です。その大枠に原盤権という権利が規定されている。それは競争を妨げる権利ではないのか。という観察です。

      そして、ご説明になった事例と可能性は、すでに競争が阻害された状態に私には見えます。ここで説明すると長くなるので、稿を改めて書ければと思っています。

      なお、法律で存在が強制されていない(であろう)音楽出版会社というプレーヤーが実際に存在するということは、現行著作権法が規定している範囲で作られた市場にその要求があるためだと推測できます。

      だから、おっしゃるような音楽出版会社に関する問題が今の日本にもしもあるならば、それは (1) 自由市場での商業音楽の本質的な問題であり、解決には法による何らかの強制が必要であるということか、(2) 現状の著作権法などが与えている権利及び規制の内容が市場を妨げているか、のどちらかだと思います。その場合私は、原盤権の存在が間接的に音楽出版会社の(アーティストに対する)力を必要以上に強くしている可能性が否めないのでは、と思います…が、この問題については私は全くの無知ですので、意味のある話はできません。さらに考察するときがあれば、教えて下さった文献などを参考にしたいと思います。


      「創作者」は著作権法には定義されていません。一度だけ使われる用法を見ると「創作する者」=著作者という意味なので、たしかに現行著作権法では実演家は含まれません。これも誤解を招く用語だったかも知れませんが、逆に言えば、実演家を創作者と見なしていないことが現行著作権法の問題だ、と私は見ているようです。これについても(同じ観察を別の面から説明するだけになりそうですが)稿を改めたいと思います。

      以上、お付き合い下さり感謝しています。今後ともよろしくお願いします。

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  5. 稿を改められるとのことなので、最後のコメントにします。

    >ひとつめ。音楽業界の用語での「原盤権」は、著作権法において「レコード製作者の権利」として定められている著作隣接権です。本文でもそのように扱っています。この理解は間違っていませんよね。


    間違ってないと思います。

    が、作曲者やアーティストや著作権者がレコード製作者になることも可能です。


    >ふたつめ。私は本論で単純化して著作者=著作権者という(多くの読者が想定するだろう)条件で書きました。


    現実には、著作者(作曲者)≠著作権者、というケースが実に多いのです。


    既に知っていることかもしれませんが。

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