2012年2月29日水曜日

情報産業2.0

2.0はもういいって? すみません。

でもずっと情報とか著作権とか起業とか考えてて、こう分類すると分かりやすいなぁと自分の中で思ってるものがあるので書いてみたいのです。分類自体は既出かも知れないけど、言葉はほとんど使われてないので私がもらった!(笑)
情報産業1.0
情報を、一部の人に渡し、他の人に渡さないという前提で利益を上げる産業。
情報産業2.0
そうでない情報産業。具体的には、全ての人に情報が行き渡ってもよいか、ある情報を全く出さない形で利益を上げる産業。

情報産業1.0の例:
  • CDを売るとか普通の出版。お金を払った人だけに渡す。
  • ソフトウェアの販売
  • いわゆる情報商材の販売

情報産業2.0の例:
  • Google 検索サービス。膨大な内部データは出さない。検索結果だけを提供する。検索結果は広く知られてもよい。
  • Twitter。内部データは出さない。利用者に応じて、その内部データの見え方 (view) を提供する。
  • Facebook。Twitter と同様に、利用者に応じた「見え方」を提供する。
  • ウェブアプリでデータ処理などを提供(Gmail とか)。動作しているソフトウェアそのものは出さない。処理されるデータが広く行き渡っても、サービス提供側は困らない(使ってる側は困るかも知れないけど)。
  • 速報的ニュースの提供。利用者が速報性にお金を払うなら、その情報は後で行き渡っても困らない。
  • 個人向けキュレーションサービス。他の人に情報が渡っても、その人向けじゃないから価値がないので構わない。

いわゆる CGM はだいたい2.0に分類されそう。きれいに分けられない場合もあるので(ニコ動とか、ライブパフォーマンスとか)、まあ情報産業2.0「的」と言う方がいいのかな。

この分類、何が分かりやすいかって言うと、情報産業1.0の方は情報の複製を法律で禁じなければ成立しないけど、2.0の方は成立するってところ。

情報産業2.0はどんなものか、実際にあるサービスを見て考えてみると、鍵は、
  • 個人化 (personalization)、見え方の提供
  • 利用者からの入力への対応、即時性、一回性
  • 情報ストックでなくフロー、速報性
くらいにあるのかなぁと思ってます。

津田大介氏 (Twitter @tsuda) が「情報の呼吸法」で、フロー情報を Twitter でリアルタイムに出して、ストック情報をメルマガで出して収益化、ということを書いてる。上のように考えると、実はそれはフローを収益化しているように私は思った。


(エッセイとノウハウの間のような不思議な感じの本。3/25までに買うと電子版が無料でもらえる。私ももらいました)

梅棹忠夫「情報の文明学」は、私の読む限り、この分類で情報産業1.0の方を考えているのかなぁという感じ。特許について書かれているところだけど(273〜274ページ):
[略]つまり、情報の公開性に、法が介入することによって、情報は経済的価値を生ずることとなったのである。
情報の経済的価値は、基本的には、その独占から発生する。[略]
[略]情報化、あるいは情報社会というものは、この情報の公開性と独占とに対する権力の介入が、正常におこなわれないかぎり成立しない。
逆に言えば、国家をまたいで(国家と無関係に)成立する情報産業は2.0の方とも言えるかも。

同じ本で、情報産業の例として教育が挙げられてます。教育は、私が考えると2.0。知識や技術そのものと教育の違いは、まさに個人化とか対応とかだから。

とは言え、知の巨人梅棹忠夫は大きすぎて、まだまだ全然わかってません…きっと拙いことを言ってるんだろうな自分。


(私の持ってるものの帯には糸井重里さんが「40年前に書かれた『知の大予言』。」との言葉を入れてます。しかも今でも越えられてない、と思う。)

で、こう分類すると、何らかの作品を作ってそれを売る一次創作者は情報産業1.0になります。そうすると勢い、著作権の強化ということになってしまう。一次創作者が、著作権なしで生きられる、情報産業2.0になれないんだろうか。

一つの手は、自分の能力そのものを自分が持つ情報と位置づけて、そこから出てくるフローで収益を上げると考える。これなら2.0だから。

あるいは、自分の作品そのものではなく、その見え方を売るという手もあるのかも。ちょっとすぐには思いつかないけど。

まあ、著作権回りのごたごたを見ていると、そういう何かうまい手があればなぁ思います。

というわけで、これから起業するなら情報産業2.0の方がいいよね〜、という話でした。

そうか、辞めずに教育を続けてもよかったんだな…でも退職届出しちゃったし。もう持ってるもの全部出すしかない、くらいの勢いで行きます。

2012年2月28日火曜日

なぜ Gumroad や PayPal が日本から現れないのか

Gumroad 回りが面白くなってます。足りない機能を補う Gumroad Search が出てきたり、リンクを隠す GumSafe が出てきたり、さらに GumSafe がコンテンツ URL を自分の方に抱えることで事実上 Gumroad の決済機能だけを利用できるようにしたり↓、面白くてたまりません。

gumsafe 開発ブログ:gumroadの決済URLが割れてもコンテンツURLの隠匿性を維持できる機能を追加しました

というわけで関連する情報を目にすれば興味を持って読んでるうちに、
はっきり言ってこんなサービス、やろうと思えばどこの会社もすぐできたはずなんです(実際そのように言っていた方も見かけました)。それをなぜやらなかったか?
物語を語ろう。物語を創ろう。|Gumroad の問題点についてもう少し掘り下げてみました。

という疑問を見かけました。

実は私も類似のサービスを数年前に思いついて、起業できるか考えたことがあるので、この疑問には答えられます。

答:やってみようとすればわかる。(苦笑)

いや、規制のせいです。ほんとそんだけ。

以下、起業家の視点で、この手のサービスがどう規制に阻まれてしまうかを書きます。正確なところは法律家に聞いて下さい。関連する法律はこんな感じ:

ちなみにプリカ法が資金決済法に変わりました(プリカ法は2009年に廃止)。あと外為法とかも関係してくるけど面倒すぎてやってられん。


なぜ PayPal は日本から生まれなかったのか


ディジタルコンテンツ売買決済をサービスしようとすれば、およそ以下の3つの方法が考えられます。

(A) 買い手からあらかじめお金を預かっておいて、それを代金に充てる
(B) 買い手がポイントを購入しておいて、それを代金に充てる
(C) 売買に応じて対価を送金する(現金を運ぶのはナンセンスなので、現金は運ばない=為替取引になる)

PayPal は(A)と(C)をやってます。

ここで、日本でお金を扱う商売をするときの大原則を見ておきましょう。これ豆知識な。

  • 商売で人からお金を預かっちゃいけない(出資法)→ (A) は禁止
  • 為替取引は、銀行しかやっちゃいけない(銀行法)→ (C) は禁止

PayPal 使ってる人は知ってると思うけど、2009年まで日本で正式サービスしてませんでした。それまで―資金決済法ができるまで―違法だったからです。そして資金決済法ができても、(A) は資金移動業者に許されてません。だから PayPal で「入金」しようとすると、日本ではダメって言われるでしょ。

日本から PayPal が出なかったわけは、PayPal のサービスが違法だったから。簡単。

この時点で、何が「自由のもたらす恵沢」(憲法前文)だ*%#@!、とか私などは思うんですが、まあともかく (B) のポイント制は残ってる。


なぜニフティ @pay はサービスをやめたんだろう


(B) のポイント制は、プリカ法の(多分)改正前だったらできた。でも資金決済法施行直前の時点(2009年)では、ポイントをあらかじめ購入してそれを代金に充てるという (B) のサービスは、登録許可制になってしまっていました。条件いっぱい。そのひとつは純資産が1億円あること。(ポイント発行残高と同額の資産でよくね?) さらに犯収法との関連で、本人確認が義務付けられた。

上で参照したエントリでニフティの @pay サービス終了に言及されてます。私は @pay って知らなかったんだけど、理由は想像つく。@pay が (C) の為替をやってたらそもそも違法行為なのでそれに気づいたか、(B) のポイント制をやってたらプリカ法が改正されて(あるいはすでに改正後で)規制に引っかかることに気づいた、ってところでは。ニフティは本職のユーザ登録では本人確認してないんじゃないかな。

参考:Biz-IT:インターネット法制度を知る!|第7回 電子マネー!

現状はプリカ法に代わって資金決済法が施行されてます。そして今、(B) のポイント制による少額決済は日本で完全に潰されました。なぜいわゆる「ポイント」は換金できないんだろう?と思ったことはありませんか。最近話題の Grow! はもらったチップを現金でなくアマゾン商品券にしかしてくれないんでしょう?

それは、資金決済法がポイントの換金(払戻し)を禁じているからです。つまり、一度ポイントを買ったら、それはお金以外の「物」になってしか相手に渡らない。

いま日本で可能なネット決済は (C) の為替のみです。


なぜ日本で Gumroad が生まれないのだろう


資金決済法は「資金決済システムの安全性、効率性及び利便性の向上に資する」(第1条)ためにできたことになっています。そして確かに、それまで銀行法で禁じられていた為替を「資金移動業者」が行えるようになりました。じゃあそれになればいいんですよ、とりあえず。

しかしそれは登録許可制です。その登録を得るためには、(どんなに少額の決済をやろうとしても)一千万円以上の保証資金を用意し、どんな社内体制で、どのような方法で商売をするのか説明し、さらに状況が悪化した時でも収益が見込めると(投資家ではなく!)政府を説得しなければならないのです。信じられん。失敗する自由がないわけだ。

そして晴れて登録が受けられても、本人確認が待っている。100円の決済をするのに Gumroad のように35円が得られるとします。本人確認のための人件費と郵送費はそれで賄えますか。無理です。最初の壁が超えられません。

Gumroad と同じサービスを日本でやろうとすれば、それは明らかに違法です。(C) の為替をやるのに本人確認をしないという一点からだけで分かる。だから Gumroad は日本からは生まれないのです。

ちなみに Gumroad のサービスそのものは違法じゃないです。資金決済法にこうある:
第六十三条  第三十七条の登録を受けていない外国資金移動業者は、法令に別段の定めがある場合を除き、国内にある者に対して、為替取引の勧誘をしてはならない。
「為替取引を提供してはならない」じゃなくて、ですよ。ここ試験に出ます(笑)


なぜ今 PayPal は日本でサービスできるのか


Gumroad と違って PayPal はちゃんと登録を受けたようです。こんな記事↓もあるし。


この記事では、PayPal が日本市場の規制緩和に努力し、緩和されたら一気にスタートみたいに書いてあります。でも私に言わせれば全く違う。PayPal は1998年にスタートしていて、日本人は(銀行以外は)2009年まで誰もスタートが切れなかった。2009年の時点で日本人は大きなハンディキャップを負っているのです。

PayPal がスタートアップ時に今の日本の法規制をクリアしてサービスを始められたか? 少なくとも、今の PayPal がやるよりは比較にならないほど困難だったと思います。それはつまり、今の法規制がスタートアップを阻害していることに他なりません。

そしてその法規制は、PayPal 自身が意図してるかどうかは別ですが、PayPal の既得権益を保護するように働いているのです。スタートアップの参入は困難で、参入できるのは銀行やクレジットカード会社などプラットフォームと体力があって登録のコストを引き受けられるところばかりでしょう。しかし儲けは薄い。本業で儲かっているなら(そしてその本業も法規制で守られている)儲からない分野に参入する動機は弱いでしょう。


いつものパターン?


日本経済の歴史はまったく詳しくないけど、これ同じことを繰り返してるんじゃないかなと思うのです。日本で規制されている間に Gumroad あるいは類似のサービスが海外で大きくなり、日本と世界を席巻する。「Gumroad」を「PayPal 」に置き換えてもそうだし、きっと「クレジットカード」もそうじゃないのかな。

日本のこれらに関する法体系は、基本的にすべてを禁止(出資法と銀行法)しているので、サービスが政府や立法者に明らかになってから特別に許すようになってます。イノベーションは政府や立法者が分からないところにこそ起こる。だから出資法と銀行法が現在のままである限り、日本において決済のイノベーションは原理的に起きないと思う。起きるとすれば、脱法行為か、海外から来るかのどちらか。

日本において、銀行(両替商)や為替が、出資法や銀行法の前に成立しているのだって、そういうことでしょう。

規制は必ず利用者の保護を目的に導入されます。それはサービスへの要求を高めることです。だから規制は必ず新規参入を阻害し、規制導入前に始めた業者の既得権益を確立する。これがいつものパターンなんじゃないかな。


何のための保護なのか


資金決済法の制定に関わった人へのインタビューを、このエントリを書くときに見つけました。

NRI:金融ITフォーカス2010年6月:金融×IT対談 [PDF]

天を仰ぐ、とは、まったくこのことです…。ネット決済業を自分でやろうとすれば、一番コストが高いのは本人確認だとすぐ分かるのに。

資金決済法が、その目的のひとつである「決済の利便性」を向上できずに失敗したことは明らかです。法が施行されて2年半あまり経ちました。世界屈指の GDP を持ち、ネット大国のひとつである日本の、世界最大の都市である東京を抱える関東財務局で、資金移動業者の登録はなんと、たったの19社です。

関東財務局:登録会社等一覧

そしてまともにサービスしている業者は、私の知る限りひとつもありません。(そりゃ Gumroad が話題になるくらいだから…)

安全や保護もいいけど、サービスがそもそも無ければ意味がありません。分かった、日本の資金決済は安全だ。できないけど。


どのようなテロや組織犯罪をどの程度我々は想定するのか


現金の受け渡しによる決済が日常生活からどんどん減り、代わって銀行振込や自動引き落とし、クレジットカード払い、カードへのチャージと支払いが増えていますよね。これら現金以外のお金の受け渡しは、犯収法によってすべて本人確認が義務付けられています。10万円以下などで本人確認が不要なのはあくまで例外として規定されているだけです。

ネット決済を例にとっても、この本人確認は我々犯罪やテロと無関係な個人に負担を求めます。その度の面倒だけでなく、便利なサービスが立ち上がらないこと、そしてそれによる雇用増で職を得られないこと。

でも、私は思うんですよ。近年の日本で組織犯罪やテロと呼べることで大きな被害が出たのは、19971995年のオウム地下鉄サリンくらいですよね。オウム真理教の資金源は信者の寄附と関連業務(PC販売業とか)だったんでは。それとも関連組織があったのに分からなかったの?

ともかく、そうだとすれば、組織犯罪やテロを防止するために最初に見なければいけないのは宗教団体の金じゃないのかと。

もちろん、組織犯罪には金がかかるから金の流れをチェックするのは犯罪(もしあるとすれば)の防止に有効でしょう。でも、それをやることで、その他の大多数の、犯罪と無関係などころか生活に必要な金の流れを阻害していていいんでしょうか。

ちょっと喩え話。犯罪では人の移動がある。だから駅の改札で毎回必ず本人確認を義務付ければ、犯罪の防止に有効だ。じゃあやりますか? それじゃ学校や会社に着けないって?

同じだと思うんですよ。金の流れ、人の動き。どちらも人の通常の行いだから、生活にも犯罪にも当然使われる。

GDP は単位時間(年)当たりの取引額で、簡単に言えばお金の速度です。お金の速度を上げれば GDP が上がる。改札での人の流れを本人確認で阻害すれば、電車の輸送力が落ちる。同じように、お金の流れを本人確認で阻害すれば、GDP に負の影響を与える。

世界経済のネタ帳:日本の GDP の推移

犯収法は2007年施行ですが、GDP の低下と関係ないのかな。犯罪のためのお金を GDP に含めたくはないけれど、犯罪と無関係だけど無名の取引だって GDP には寄与していたはずでしょう。

もし本人確認が GDP に悪影響を与えてるとすると、我々は(どの程度のものがどのくらいの頻度であるか分からない)組織犯罪を防いではいる(かも知れない)けど、そのための不景気で、就職ができない大量の新卒を出し、もしかしたら事業が立ち行かなくて自殺する人を出してるかも知れないと思うんですが…

善良な一般市民が過大な負担を負わないように犯罪を防いだり捜査をするのが警察の仕事でしょう。それに、犯罪防止と捜査のためには犯罪に関係あるお金の動きさえ追えればいいはず。すべての人に関する金の動きを、しかも市民に記録させるなんて、手を抜き過ぎではないのかな。必要なら税金は払うけど、経済を妨げてはいかんと思うよ。

(児ポ法関連で出てくる情報の単純所持違法化も同じ構造だけど、これについてはまた機会があったら。)


まとめ


イノベーションは自由の下でしか起きません。他者に危害を加えない限り自由、という状態を超えて保護をする(=他者に危害を加えないのに規制される)ならイノベーションは阻まれます。そして決済に関しては、出資法と銀行法のために、日本では全てが原則禁止です。許される時には犯収法がコストを上乗せする。

だからクレジットカードも PayPal も Gumroad も日本からは生まれない。そう思います。

そしてそのこっち側には、保護されたい、安全を求める我々がいます。我々が安全と保護を求めれば求めるほど、法規制が行われ、業者のサービスへの要求が高まり、イノベーションが阻害されあるいは既得権益が確立し、その結果として我々は不便と不況を被るわけです。

日本のサービスは安全です。職はないけれど。

2012年2月26日日曜日

Bunkamura のフェルメール展に行ってきた

今日は天気が良ければ梅を見に行こうかと思ってたら、空がどんよりしてたし寒さで梅の開花が遅いそうなので、渋谷の Bunkamura ザ・ミュージアムでやってるフェルメール展へ行ってきました。

Bunkamura|フェルメールからのラブレター展

いま見ると妙な題名だなぁ。別にフェルメールが書いたラブレターが展示されているわけではないですよ。

特集ページに写真のあるフェルメールの絵3点が来てます。

(あまり馴染みのない人のために:フェルメールの作品は三十数点しか現存してません)

今回の売りは修復された《手紙を読む青衣の女》で、確かにとてもよかった。鮮やかに復元された(であろう)色と、それによって表現された顔や手の表情。入館料が1,500円で普通よりちょっと高かったけど、他の2点を含めて、これなら十分です。でも前売り買っとくんだったな…

フェルメールが突出しているとは言え、他に展示されてるオランダ絵画の中にも気に入ったものがいくつもありました。特にヘリット・ダウの《執筆を妨げられた学者》はよかった。自分の部屋用に欲しかった(←無理)。絵葉書あったら買ったのにな。

美術館に着いてから、そうだここは週末は混むんだっけ(汗)と思いきや、チケット売り場はほとんど並んでおらず。しかし中に入ったらやっぱり混んでた(苦笑)。まあフェルメールは日本で人気あるらしいし、仕方ない。でも行くなら平日の方がよさそうです。

フェルメールって観たことない、でも興味あるって人には、来てる3点はがっかりさせないと思います。入館料の1500円は高いけど、フェルメール展はだいたいこんな値段設定みたいです。夏に今度はマウリッツハイス美術館展があって、これも1600円。今度は前売り買うの忘れないようにしよう。

あとやっぱり単眼鏡が便利。こういう混んでる展示会では1列目は流れないと後の人に悪いので、細かいところやもう一度見たいところは後で2列目以降から単眼鏡で観たりしてます。

以前使ってた単眼鏡はこれ→ESCHENBACH(エッシェンバッハ) 単眼鏡 クラブM 6倍 4293-616。片手で持って焦点を合わせられるのが素晴らしい。紐を巻いてソフトケースに入れて便利に持ち運べる。

これに不満はなかったんだけど、今は別のを使ってます→CZ ルーペ単眼鏡 Mono 4x12T*。明るく見えるし、最短合焦距離が約45cmと短いので上からショーケースを覗くような展示のときに良く見えて便利。筒を引き出すような焦点合わせ方法だから両手使わないと難しいけど、おかげで複雑な機構がないためかコンパクトなのでいつも持ってます。会議でパワポの字が小さくて見えないときにも重宝します(笑)

フェルメールの絵は数が少ないので、つい「そのうちいくつ観たか」とか思ってしまうんですよね。そういうもんじゃないのに(苦笑)。

2012年2月23日木曜日

私が大学を辞めるわけ (2):震災と原発事故

「私が大学を辞めるわけ (1):大卒の就職率」では辞める大きな理由として新卒の就職率を挙げました。もうひとつの大きな理由が今回の震災です。だからこのタイミングになりました。

実は母親がひとりでいわきに住んでいます。長男としてはいつまでも放っておけないと前々から思っていました。放射線量は、年末年始に行ったときにはまだ線量計を持ってなかったのでよく分からない。でもまあ、食べ物とか含めて、それほどいい状況のようには思っていません。

放射線量計は今これ↓のType1を持ってます。Type2ほしい〜

Radiation-Watching.org:ポケットガイガー iPod/iPad/iPhoneにつながる放射線センサー「ポケガ」、3700円から!

(うひゃ〜すげぇアフィリンクっぽいw けど違いますw)

将来いわきに移住することも考えていたんだけど、まだ状況が不安定かつ先行きも不透明なので、とりあえず母親をこちらの方に呼び寄せて一緒に住もうと思ってます。一応、3世代同居を常々提案しているので実践も兼ねて。てかまだ子供いないから2世代 (^^;;

具体的にどこに住むかは考えてません。とりあえず東京近辺には十分住んだから、東京へのアクセスのそれほど悪くない田舎かなぁ。

原発事故に関しては、ツイッターでよくつぶやいてる通り、私は日本の政治的意思決定の失敗じゃないかと思っています。同じような失敗を繰り返さないためにはどうしたらいいか。そのために自分がやれることは何か。そう考えたら、専門外の大学教員として意見らしきものを言っていても何の役にも立たないと気づいたのです。これも辞める理由のひとつ。

じゃあ大学を辞めればどうにかなるのか。それはまだ分からない…

もうひとつの英語勉強法 (1):会話ができるためには何から学ぶ?

ちょっと反響があったので、私が自分で実施してきて、うちの学生にも実施した、私流の英語勉強法を書いて行きたいと思います。勉強法とは言っても「コツの集まり」くらいのものです。効果は自分と学生で実証済みと思ってますが、保証はしません(笑)

今回は、日本での普通の英語学習になぜか決定的に欠けていて、でもそれが英会話がうまくできるためにとても大事だという項目について書きます。

なぜ英語が聞こえない?


ホームステイを長くやったのに英語がうまくならなかったなどという話を聞きませんか。私はアメリカに研究員で行ったとき、そこの大学(かなりレベル高いところです)にいる日本人学生や研究者の、特に聴き取りの力が平均してかなり低いことにびっくりしました。何年もアメリカにいる人でもそうなのです。

これは、単に量をこなしただけでは聴き取り力が上がらないことを示しています。

ちょっと日本語のことを考えてみましょう。あなたが誰かと話していて、その相手が例えば「ほぴめる」と言ったとする。そんな言葉はないけど、あなたは相手が「ほぴめる」って言ったことは分かります。なぜか。それは、あなたが hopimeru、母音と子音では h, o, p, i, m, e, r, u の全ての音を知っているからです。

では英語はどうか。あなたは、相手が(発音記号で書いたとき)「miθ」と言ったとき、それが m, i, θという音だと分かるでしょうか。

これは、聴き取りにおいて根本的だと思います。耳で聴いて「miθ」だと分からなければ、もしも myth という語を知ってても、それと分からないんだから、会話をしようとしても無理。これはまるで、将棋の駒の動きを知らないのに将棋で勝とうとするようなものです。

なのに、日本の学校英語教育や、普通の英会話学校では、この根本的なところをほとんど教えていないように思います。経験上、ほとんどの学生は、英語の音が聞き分けられません。

じゃあどうする?


英語が聞こえる前提条件は、英語を構成するすべての音が聞き分けられることです。

いやいや待てと。聴いても聞こえず、量をこなしてもダメならどうするんだ。英語耳はX歳までとも言うし…

そこで私が勧めるのは、まずは英語の音を作れるように発音の練習をすることです。単語ではなく、個々の音(母音や子音)の作り方を知り、それを練習します。

具体的には以下のようになります。
  1. 正しい音を聴く。
  2. 音の出し方を学ぶ。口の形、舌の位置、息の使い方などを教わる。
  3. 正しい音に近い音が作れるように練習する。
音をただ聴いて聞き分けるのは(それこそ「英語耳」が必要なので)難しいけど、このやり方の2番の音の出し方は感覚ではなく理屈なので大人でもできる。ここがポイントです。

学生に教えるときは、私が発音して(1番)、音の出し方を黒板とかで説明し(2番)、発音させて軽くチェックします。あとは学生にお任せ(3番)です。このやり方で20分くらい教えると、例えば単独のL音とR音なら8割くらいの学生が聞き分けられるようになります。

英語耳はX歳まで?


英語ネイティブから習ってる小さい子供が、やたらとネイティブっぽい発音を習得してるの見るとむかつきますよね(笑)。でも私は「英語耳はX歳まで」ってのを信じてません。大人でもやり方次第で英語は聞こえるようになる。そう思ってます。私が証拠だし、私が教えてできるようになった学生たちが証拠です。

小さい子供は音に慣れるのが早い。大人は日本語の音に長く慣れているので、新しい音に慣れるのは当然時間がかかる。でも、それだけだと思います。慣れる対象としての音と口の動きが分かってしまえば、あとは慣れるだけ。

どうせ英語をやらなきゃいけないんだったら、「英語耳はX歳まで」などという「できない理由」はどうでもいいですよね。必要なのは「できるやり方」なんですから。

2012年2月22日水曜日

トランクルームを見てきた

ブログ書くの慣れてなくて、適度な長さと内容ってのが分からず、下書きが3つほど溜まってしまってます(汗)。何日もかけて書く論文じゃないって…

というわけでそれらは寝かせておいて、今日は見てきたトランクルームの話を書きます。(←子供の日記かよ)

職場を3月末に引き払い、自分の荷物を新しい本拠地に移すのですが、その新しい本拠地がまだ全く決まっていません。いま住んでるアパートは手狭でとても荷物が置けない。そこで、トランクルームでも借りようかと考えてるところ。

トランクルームって、でかい倉庫の中に小部屋が並んでたり、敷地に鉄製のコンテナが並んでたりするやつ(これは通勤路で見るので知ってた)だと思ってました。今日行ったところには、倉庫内の小部屋タイプもあったのですが、それとは別に巨大段ボール箱タイプとでも呼べそうなものがありました。これがちょっと気になった。

どんなのかと言うと、一辺が2mくらいの立方体の段ボール箱を想像して下さい。それの手前の面が外れます。すると、壁がひとつ無い部屋(テレビのお笑いで使うような)になる。そこに荷物を入れて、また壁をはめる。そしたらそれをフォークリフトで倉庫に入れてしまっておいてくれるのです。

(そうか、こういうとき写真撮ってくればいいんだな…)

部屋タイプだと細々と出し入れするのにはたしかに便利そう。でも荷物の移動の仮置きには箱タイプで十分だし、部屋タイプよりも広さの割に安い。倉庫会社の人は「コンテナタイプのように24時間いつでも出し入れってわけには行きませんが…」って言ってたけど、むしろ夜間は倉庫にしまっておいてくれた方が私は安心だなぁ。

すっかり箱タイプに惹かれて帰ってきたのでした。サイズがあるから荷物を梱包して量を測らないと。

って梱包までの道のりが長いのだった…

2012年2月19日日曜日

いぇっとあなざー英語勉強法

大学に着任した当時、3年生を少人数(10人くらい)ずつ分担して英語を教える授業があって、自分も担当してました。題材は英語で書かれた電子回路の教科書。4年次の卒業研究に備えて専門分野の英語を読めるようにするための授業だけど、いま考えると面白い。これってある意味、一般教養の英語授業を信用してないってことじゃないか(笑)

自分の研究でも、英語論文を読む必要があるし、学会では英語でも発表する。そこで、英語そのものも勉強しつつ、英語の効果的な学び方や教え方についてずっと考えて、また教えてもきました。

まあ世には「英語勉強法」が数多あるわけですが、そんなわけで私もひとつ書いてみんとて書くなり。

とは言え、「英語上達完全マップ」のように体系的なものが書ける気はしません(というかこのサイトはなかなかいいと思う。おすすめです)。それよりも、ちょっとした役に立つノウハウが提供できればいいなと思っています。

おっと、そのノウハウがどのくらい信用できるか、ですよね。

私は普通の日本の学校教育で英語を受けてきて、大学4年までは十人並の英語力だったと思います。もちろん会話など全くできませんでした。その後、独学で試行錯誤して、10年くらいで自分の分野の学会で発表と質疑応答が問題なくできるまでになりました。TOEIC で言うと910点。「日本で、独学で」という条件の下で900点以上が取れたのは悪くないと思います。

そのあと1年在米して点数は965まで上がりましたが、そのあと受けてません。あんまり TOEIC に儲けさせても仕方ないし (^^;;

今は、学生に国際会議で発表させるときに2か月くらいで発音と会話を叩き込みます。これまで3人ほどにやりました。それまでの英語力が十人並でも、発表がきちんとでき、ある程度の質疑応答ができるようになります。質疑応答の方は個人差が出ますけど。

というわけで、これからそういうノウハウとか教えたり学んだりした体験を書いていこうと思うので、役に立ちそうなら使って下さい。

とりあえず今回は「英語上達完全マップ」サイトのご紹介まで。ああ、あと私が a と the の違いを分かり始めた本を紹介しておこうっと。



この本は面白いし、日本人が「日本人の英語」から脱するポイントがいくつも書いてある超おすすめ本です。私が「英語をしっかりやろう!」と思ったときにちょうど出版されて、その後の職業にまで関わった、私にとっては運命の本のひとつです。おかげで今は論文をアメリカの論文誌に投稿しても文法誤りを直す編集がほとんど入らないくらい書けるくらいになりました。感謝感謝…

てか、一番驚いたのが、日本語ネイティブじゃないのにこの著者なんでこんな文章が書けるんだ、ってとこだったり(苦笑)

ちなみに続編も出てます。3作目はあんまり印象に残ってない (^^;;



次は何を書こうかな。←行き当たりばったりすぎるw

2012年2月18日土曜日

畠山記念館 畠山即翁の茶会

畠山記念館の冬季展「畠山即翁の茶会」に行ってきました。昭和26年に催された即翁さん古稀自祝の茶会で披露された茶道具の展示なんだそうです。しかし今日は人が多かった…列品解説にこんなに人がいるの初めて見た。喜ばしいことだけど混んでるのは何とも(苦笑)。

展示の方は、光悦の「雪峯」(上↑のページの写真)はとてもよかったし、他にも掛軸などもよかった。自分としては特に舟形銚子が気に入った。学芸員さんが意図した通り、即翁さんのお茶会を楽しませてもらいました。

茶道具を好んで美術館によく見に行きますが、畠山記念館の雰囲気が一番好きですね。とても落ち着いて鑑賞できる。大きな茶室のように作られてるって話だったかな、たしか。

でも今日は鑑賞中に二度も地震があってガラスが音を立てたのでちょっとドキドキしました…

ここは展示室内で抹茶とお菓子が頂けて、いつもは「二人静」のようなお菓子がつくんだけど、この展示の期間だけは同じ値段(400円)で特別に、即翁さんの茶会で実際に使われた森八の「長生殿」を出してくれてます(上の展示会情報のページ参照)。学芸員さんが「奮発して!」って言ってました(笑)。もちろん頂いてきましたよ!







iPhone で日本語入力が重くなった

特に iOS を入れ替えたわけでもないのに、最近 iPhone 4 で日本語入力時の反応が遅いなぁと思っていた。同時に起動してるアプリを落としても改善されない。いらいら。

ふと思って探してみて、キーボードの変換学習をリセットできることを見つけた。やってみたら見事に軽くなった。(注意:効果には個人差がある…かも知れませんw)

iPhone 4 と iOS 5.0.1 では、ホーム画面から「設定」>「一般」>「リセット」>「キーボードの変換学習をリセット」です。リセットすると、変換候補の順序や絵文字の履歴がリセットされるようです。他に何がリセットされるか、表示されるダイアログ↓からはよく分からなかったので、自己責任でお願いします (_ _)


ただ、これやってもツイッターのウェブインタフェースの入力の遅さはあまり改善された感じがない。きっと JavaScript か何かで、キー入力毎に処理をしてるせいだと思う。

効果はアプリによりけり、かな。

私が大学を辞めるわけ (1):大卒の就職率

退職届を先週出したと書いたけど、辞めることを回りに伝え始めてからふた月ほどになりますが、意外と「どうして?」と訊かれないものですね。そこで自分から書いてしまいます。

多くの人が独立を祝ってくれたり成功を祈ってくれますが、やっぱ内心「大変だろうなぁ」と思ってるはず。自分でも、賢い選択じゃないと思うくらいだから。不景気で就職難で先行き不安なときに、それなりに安定して収入がある仕事を自ら辞めるなんて。だからそれなりの理由があるのですよ、うん。(書いたら結局「バカだ」ってことになったりして…)

実は大小たくさんの理由と状況が絡んでます。職場ではそのうち大きな(そして説明しやすいw)理由を伝えました。せっかくブログなのでここでは別の理由を書いてみたいと思います。

新聞などで報道されている通り、大卒の就職内定率が近年下がっています。このページ↓のグラフは私の体感にも近い。

就職(内定)率の推移(大学)

どの年度でも、4/1時点の最終的な就職率は90%を超えているので高いように見えます。でも実態は違うと思う。内定を取れなかった4年生は留年をわざと選択することで、翌年度の就活時に新卒として扱われるようにする。いわゆる「新卒カード」を持っておきたいわけです。(「新卒カードは百万だしても買えない」らしい。)これによって分母の卒業生数が減り、見かけの就職率が上がっているはず。

就活の話はさておき、こんなわけで大卒の就職率は8割とかだったりする。ならば、私が頑張って学生を教えても、平均してやはり2割は就職できない。ものすごーく頑張って100%にしたとしても、今度は別の大学の学生がそのぶん就職できない。

つまり、いくら大学が頑張っても、そして大学間に競争を導入しても、若者を全体として就職させられるか(←これは重要なことだと私は思っています)には全く貢献できません。そればかりか、逆に競争のための無駄が若者全体に不利益をもたらしている。そう思ったのです。

だったら仕事を作った方がいい。若者が稼げる機会を作る方が、よっぽど役に立つ。

そんなわけで、仕事を作る側に回ろうと思ったのでした。

まあ私が辞めたら准教授のポストがきっと空くので、それで仕事を少なくともひとつ作ったことにはなるかも(笑)

2012/02/19: 題名から分かりやすいように副題を追加。

2012年2月17日金曜日

起業日記?

さて、退職届を出しました。先週の水曜だったかな。4月から定収入が無いので、本格的に稼ぐ算段をしなければなりません。せっかくだから悪戦苦闘ぶりをお伝えしようかとブログを再開することにしました。副題なんかつけてみたりして。

「ブログって何のために書くんだろう?」と一日二日ほど考えてました。はっきりした答えは得られなかったけど、曲がりなりにも18年ほど大学の先生をやってこられたってことは何かきっと学生に伝えてきたはずで、じゃあそういうことを書けば役に立ててくれる人がいるんじゃないだろうか。

そんなわけで、起業の話と学校の話を織り交ぜていろいろ書こうかと思うんですが、まあ先のこたぁ分からん(笑)。