2012年2月28日火曜日

なぜ Gumroad や PayPal が日本から現れないのか

Gumroad 回りが面白くなってます。足りない機能を補う Gumroad Search が出てきたり、リンクを隠す GumSafe が出てきたり、さらに GumSafe がコンテンツ URL を自分の方に抱えることで事実上 Gumroad の決済機能だけを利用できるようにしたり↓、面白くてたまりません。

gumsafe 開発ブログ:gumroadの決済URLが割れてもコンテンツURLの隠匿性を維持できる機能を追加しました

というわけで関連する情報を目にすれば興味を持って読んでるうちに、
はっきり言ってこんなサービス、やろうと思えばどこの会社もすぐできたはずなんです(実際そのように言っていた方も見かけました)。それをなぜやらなかったか?
物語を語ろう。物語を創ろう。|Gumroad の問題点についてもう少し掘り下げてみました。

という疑問を見かけました。

実は私も類似のサービスを数年前に思いついて、起業できるか考えたことがあるので、この疑問には答えられます。

答:やってみようとすればわかる。(苦笑)

いや、規制のせいです。ほんとそんだけ。

以下、起業家の視点で、この手のサービスがどう規制に阻まれてしまうかを書きます。正確なところは法律家に聞いて下さい。関連する法律はこんな感じ:

ちなみにプリカ法が資金決済法に変わりました(プリカ法は2009年に廃止)。あと外為法とかも関係してくるけど面倒すぎてやってられん。


なぜ PayPal は日本から生まれなかったのか


ディジタルコンテンツ売買決済をサービスしようとすれば、およそ以下の3つの方法が考えられます。

(A) 買い手からあらかじめお金を預かっておいて、それを代金に充てる
(B) 買い手がポイントを購入しておいて、それを代金に充てる
(C) 売買に応じて対価を送金する(現金を運ぶのはナンセンスなので、現金は運ばない=為替取引になる)

PayPal は(A)と(C)をやってます。

ここで、日本でお金を扱う商売をするときの大原則を見ておきましょう。これ豆知識な。

  • 商売で人からお金を預かっちゃいけない(出資法)→ (A) は禁止
  • 為替取引は、銀行しかやっちゃいけない(銀行法)→ (C) は禁止

PayPal 使ってる人は知ってると思うけど、2009年まで日本で正式サービスしてませんでした。それまで―資金決済法ができるまで―違法だったからです。そして資金決済法ができても、(A) は資金移動業者に許されてません。だから PayPal で「入金」しようとすると、日本ではダメって言われるでしょ。

日本から PayPal が出なかったわけは、PayPal のサービスが違法だったから。簡単。

この時点で、何が「自由のもたらす恵沢」(憲法前文)だ*%#@!、とか私などは思うんですが、まあともかく (B) のポイント制は残ってる。


なぜニフティ @pay はサービスをやめたんだろう


(B) のポイント制は、プリカ法の(多分)改正前だったらできた。でも資金決済法施行直前の時点(2009年)では、ポイントをあらかじめ購入してそれを代金に充てるという (B) のサービスは、登録許可制になってしまっていました。条件いっぱい。そのひとつは純資産が1億円あること。(ポイント発行残高と同額の資産でよくね?) さらに犯収法との関連で、本人確認が義務付けられた。

上で参照したエントリでニフティの @pay サービス終了に言及されてます。私は @pay って知らなかったんだけど、理由は想像つく。@pay が (C) の為替をやってたらそもそも違法行為なのでそれに気づいたか、(B) のポイント制をやってたらプリカ法が改正されて(あるいはすでに改正後で)規制に引っかかることに気づいた、ってところでは。ニフティは本職のユーザ登録では本人確認してないんじゃないかな。

参考:Biz-IT:インターネット法制度を知る!|第7回 電子マネー!

現状はプリカ法に代わって資金決済法が施行されてます。そして今、(B) のポイント制による少額決済は日本で完全に潰されました。なぜいわゆる「ポイント」は換金できないんだろう?と思ったことはありませんか。最近話題の Grow! はもらったチップを現金でなくアマゾン商品券にしかしてくれないんでしょう?

それは、資金決済法がポイントの換金(払戻し)を禁じているからです。つまり、一度ポイントを買ったら、それはお金以外の「物」になってしか相手に渡らない。

いま日本で可能なネット決済は (C) の為替のみです。


なぜ日本で Gumroad が生まれないのだろう


資金決済法は「資金決済システムの安全性、効率性及び利便性の向上に資する」(第1条)ためにできたことになっています。そして確かに、それまで銀行法で禁じられていた為替を「資金移動業者」が行えるようになりました。じゃあそれになればいいんですよ、とりあえず。

しかしそれは登録許可制です。その登録を得るためには、(どんなに少額の決済をやろうとしても)一千万円以上の保証資金を用意し、どんな社内体制で、どのような方法で商売をするのか説明し、さらに状況が悪化した時でも収益が見込めると(投資家ではなく!)政府を説得しなければならないのです。信じられん。失敗する自由がないわけだ。

そして晴れて登録が受けられても、本人確認が待っている。100円の決済をするのに Gumroad のように35円が得られるとします。本人確認のための人件費と郵送費はそれで賄えますか。無理です。最初の壁が超えられません。

Gumroad と同じサービスを日本でやろうとすれば、それは明らかに違法です。(C) の為替をやるのに本人確認をしないという一点からだけで分かる。だから Gumroad は日本からは生まれないのです。

ちなみに Gumroad のサービスそのものは違法じゃないです。資金決済法にこうある:
第六十三条  第三十七条の登録を受けていない外国資金移動業者は、法令に別段の定めがある場合を除き、国内にある者に対して、為替取引の勧誘をしてはならない。
「為替取引を提供してはならない」じゃなくて、ですよ。ここ試験に出ます(笑)


なぜ今 PayPal は日本でサービスできるのか


Gumroad と違って PayPal はちゃんと登録を受けたようです。こんな記事↓もあるし。


この記事では、PayPal が日本市場の規制緩和に努力し、緩和されたら一気にスタートみたいに書いてあります。でも私に言わせれば全く違う。PayPal は1998年にスタートしていて、日本人は(銀行以外は)2009年まで誰もスタートが切れなかった。2009年の時点で日本人は大きなハンディキャップを負っているのです。

PayPal がスタートアップ時に今の日本の法規制をクリアしてサービスを始められたか? 少なくとも、今の PayPal がやるよりは比較にならないほど困難だったと思います。それはつまり、今の法規制がスタートアップを阻害していることに他なりません。

そしてその法規制は、PayPal 自身が意図してるかどうかは別ですが、PayPal の既得権益を保護するように働いているのです。スタートアップの参入は困難で、参入できるのは銀行やクレジットカード会社などプラットフォームと体力があって登録のコストを引き受けられるところばかりでしょう。しかし儲けは薄い。本業で儲かっているなら(そしてその本業も法規制で守られている)儲からない分野に参入する動機は弱いでしょう。


いつものパターン?


日本経済の歴史はまったく詳しくないけど、これ同じことを繰り返してるんじゃないかなと思うのです。日本で規制されている間に Gumroad あるいは類似のサービスが海外で大きくなり、日本と世界を席巻する。「Gumroad」を「PayPal 」に置き換えてもそうだし、きっと「クレジットカード」もそうじゃないのかな。

日本のこれらに関する法体系は、基本的にすべてを禁止(出資法と銀行法)しているので、サービスが政府や立法者に明らかになってから特別に許すようになってます。イノベーションは政府や立法者が分からないところにこそ起こる。だから出資法と銀行法が現在のままである限り、日本において決済のイノベーションは原理的に起きないと思う。起きるとすれば、脱法行為か、海外から来るかのどちらか。

日本において、銀行(両替商)や為替が、出資法や銀行法の前に成立しているのだって、そういうことでしょう。

規制は必ず利用者の保護を目的に導入されます。それはサービスへの要求を高めることです。だから規制は必ず新規参入を阻害し、規制導入前に始めた業者の既得権益を確立する。これがいつものパターンなんじゃないかな。


何のための保護なのか


資金決済法の制定に関わった人へのインタビューを、このエントリを書くときに見つけました。

NRI:金融ITフォーカス2010年6月:金融×IT対談 [PDF]

天を仰ぐ、とは、まったくこのことです…。ネット決済業を自分でやろうとすれば、一番コストが高いのは本人確認だとすぐ分かるのに。

資金決済法が、その目的のひとつである「決済の利便性」を向上できずに失敗したことは明らかです。法が施行されて2年半あまり経ちました。世界屈指の GDP を持ち、ネット大国のひとつである日本の、世界最大の都市である東京を抱える関東財務局で、資金移動業者の登録はなんと、たったの19社です。

関東財務局:登録会社等一覧

そしてまともにサービスしている業者は、私の知る限りひとつもありません。(そりゃ Gumroad が話題になるくらいだから…)

安全や保護もいいけど、サービスがそもそも無ければ意味がありません。分かった、日本の資金決済は安全だ。できないけど。


どのようなテロや組織犯罪をどの程度我々は想定するのか


現金の受け渡しによる決済が日常生活からどんどん減り、代わって銀行振込や自動引き落とし、クレジットカード払い、カードへのチャージと支払いが増えていますよね。これら現金以外のお金の受け渡しは、犯収法によってすべて本人確認が義務付けられています。10万円以下などで本人確認が不要なのはあくまで例外として規定されているだけです。

ネット決済を例にとっても、この本人確認は我々犯罪やテロと無関係な個人に負担を求めます。その度の面倒だけでなく、便利なサービスが立ち上がらないこと、そしてそれによる雇用増で職を得られないこと。

でも、私は思うんですよ。近年の日本で組織犯罪やテロと呼べることで大きな被害が出たのは、19971995年のオウム地下鉄サリンくらいですよね。オウム真理教の資金源は信者の寄附と関連業務(PC販売業とか)だったんでは。それとも関連組織があったのに分からなかったの?

ともかく、そうだとすれば、組織犯罪やテロを防止するために最初に見なければいけないのは宗教団体の金じゃないのかと。

もちろん、組織犯罪には金がかかるから金の流れをチェックするのは犯罪(もしあるとすれば)の防止に有効でしょう。でも、それをやることで、その他の大多数の、犯罪と無関係などころか生活に必要な金の流れを阻害していていいんでしょうか。

ちょっと喩え話。犯罪では人の移動がある。だから駅の改札で毎回必ず本人確認を義務付ければ、犯罪の防止に有効だ。じゃあやりますか? それじゃ学校や会社に着けないって?

同じだと思うんですよ。金の流れ、人の動き。どちらも人の通常の行いだから、生活にも犯罪にも当然使われる。

GDP は単位時間(年)当たりの取引額で、簡単に言えばお金の速度です。お金の速度を上げれば GDP が上がる。改札での人の流れを本人確認で阻害すれば、電車の輸送力が落ちる。同じように、お金の流れを本人確認で阻害すれば、GDP に負の影響を与える。

世界経済のネタ帳:日本の GDP の推移

犯収法は2007年施行ですが、GDP の低下と関係ないのかな。犯罪のためのお金を GDP に含めたくはないけれど、犯罪と無関係だけど無名の取引だって GDP には寄与していたはずでしょう。

もし本人確認が GDP に悪影響を与えてるとすると、我々は(どの程度のものがどのくらいの頻度であるか分からない)組織犯罪を防いではいる(かも知れない)けど、そのための不景気で、就職ができない大量の新卒を出し、もしかしたら事業が立ち行かなくて自殺する人を出してるかも知れないと思うんですが…

善良な一般市民が過大な負担を負わないように犯罪を防いだり捜査をするのが警察の仕事でしょう。それに、犯罪防止と捜査のためには犯罪に関係あるお金の動きさえ追えればいいはず。すべての人に関する金の動きを、しかも市民に記録させるなんて、手を抜き過ぎではないのかな。必要なら税金は払うけど、経済を妨げてはいかんと思うよ。

(児ポ法関連で出てくる情報の単純所持違法化も同じ構造だけど、これについてはまた機会があったら。)


まとめ


イノベーションは自由の下でしか起きません。他者に危害を加えない限り自由、という状態を超えて保護をする(=他者に危害を加えないのに規制される)ならイノベーションは阻まれます。そして決済に関しては、出資法と銀行法のために、日本では全てが原則禁止です。許される時には犯収法がコストを上乗せする。

だからクレジットカードも PayPal も Gumroad も日本からは生まれない。そう思います。

そしてそのこっち側には、保護されたい、安全を求める我々がいます。我々が安全と保護を求めれば求めるほど、法規制が行われ、業者のサービスへの要求が高まり、イノベーションが阻害されあるいは既得権益が確立し、その結果として我々は不便と不況を被るわけです。

日本のサービスは安全です。職はないけれど。

47 件のコメント:

  1. 1ショットで10万円以下の決済なら資金決済法の本人確認義務はありませんよね。資金移動事業者の登録も大した手間ではないですし、100%供託金が必要といっても、ちゃんとビジネスモデルがあって資金調達したベンチャーであったら、無理な話ではないと思います。

    また、そもそもGumroadの場合、P2Pで商品やサービスを販売しているサイトなので、送金や為替取引に該当しないのではないかと思います。

    さら、マネーロンダリング対策のための本人確認に関する規制は、日本に限らないです。FATFという国際機関による勧告で各国(アメリカも含め)犯収法相当の本人確認法を制定して規制しています。当然PayPalも各国でこれに対応しています。日本は逆に本人確認規制が緩いんじゃないかとFATFからツッコミを受けているくらいです。

    個人的には、法をちゃんと読み解き解釈する能力と法に準拠できる(むしろ逆手に取る)イノベーション創出能力が日本の企業にないのも課題なんだと思ってます。

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    1. コメントありがとうございます。1回限りならいいですが、受け取りにアカウントを作らせると繰り返しての受け渡しになるので本人確認が必要、とどこかで読んだ気がします。資金移動事業者の「登録」は、法と政令を私が読んだ限りでは、実際には許可というくらいハードルが高いと思ってます。兼業が許されていて、1千万プラスαの資金で可能、しかも新規市場なのに、2年半経って関東で19社しか登録が無いことがそれを物語っているのではないでしょうか。

      Gumroad が販売をしているだけで決済をしていない、というのは、個人的にはグレーだと思ってます。パチンコ店の換金みたいな感じ。実際には物を販売しないリンクを使って決済ができますよね。で、そういうグレーなところからイノベーションが起きることもあるよなぁという感じで書きました。

      私は PayPal のサービスを使うのに直接に本人確認されたことはありません。もしそれでも義務付けられた本人確認を PayPal がしていたはずなら、きっとクレジットカード経由だからでしょう。資金決済法の解釈としては、それで本人確認できているというものと、ダメだというもののふたつを読んだことがあります。記事中にリンクのある制定に関わった人のインタビューでは、本人確認が厳しくなってしまったということが書いてあります。

      最後についてはもっともだと思います。それと同時に、立法者側にイノベーション創出という視点がもっとあればなぁと思います。

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    2. > 1回限りならいいですが、受け取りにアカウントを作らせると繰り返しての受け渡しになるので本人確認が必要

      はい。だからGumroadのようなサービス場合は本人確認義務はありません。

      > しかも新規市場なのに、2年半経って関東で19社しか登録が無いことがそれを物語っているのではないでしょうか。

      これは登録が大変なこと以外に、別の理由があると思います。

      > そういうグレーなところからイノベーションが起きることもあるよなぁという感じで書きました。

      はい。だからこそグレーのところを明確に白と線引きして法を解釈してリスクを負いやすいベンチャーがサービスすればいいと思います。

      > 私は PayPal のサービスを使うのに直接に本人確認されたことはありません。

      PayPalの日本向けサービスはクレジットカード決済くらいしかサービスがないので、本人確認義務はありません。PayPalは送金サービスは日本では行なってませんので。

      > 最後についてはもっともだと思います。それと同時に、立法者側にイノベーション創出という視点がもっとあればなぁと思います。

      そういうことを言っていたのではなくて、事業者側にもっと法を読み解く力が必要だということです。本人確認一つとっても安価にできる方法がいくらでもあります。法律が厳しいからサービスできないだから日本はダメなんだという子供の泣き言にしか聞こえません。

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    3. 実際、やってみようとすれば分かると思うけど、
      指導という強力な壁があり、様々な圧力が・・・

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    4. 本人確認と言うべきかは分かりませんが、3~4年前にPayPalでKivaのアカウントに500ドルほど入れたら、翌日確認の電話が掛かってきたことはあります。クレジットカードの不正利用じゃないかの確認だったのかもしれませんが、PayPalが心配する必要はありませんし。ちなみに、電話は英語でした。

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    5. 皆さん、ありがとうございます。

      私もアメリカにいたとき、旅行中に突然デビットカードが使えなくなったことがありました。銀行に電話したら、利用履歴が不審だったので一応止めたと言われました。旅行で変わった経路で州を跨いだためのようでした。向こうでは安全のために結構そういうやりとりが普通にあるんですかね。日本では銀行と直接電話しなきゃいけないなんて経験はほとんどありません。

      shingoym さん:

      >> 1回限りならいいですが、受け取りにアカウントを作らせると繰り返しての受け渡しになるので本人確認が必要
      >
      > はい。だからGumroadのようなサービス場合は本人確認義務はありません。

      いや、Gumroad は資金移動ではないということですよね。ならば私のこれ↑はそれ以外の資金移動業をやろうとするときの話と解釈して下さい。

      >> しかも新規市場なのに、2年半経って関東で19社しか登録が無いことがそれを物語っているのではないでしょうか。
      >
      > これは登録が大変なこと以外に、別の理由があると思います。

      それは何でしょう? お聞かせ下さるととても参考になるので、是非よろしくお願いします。

      >> そういうグレーなところからイノベーションが起きることもあるよなぁという感じで書きました。
      >
      > はい。だからこそグレーのところを明確に白と線引きして法を解釈してリスクを負いやすいベンチャーがサービスすればいいと思います。

      それを否定してはいません。その場合のリスクは、収益に関するリスクではなく、法令遵守におけるリスクになると思います。

      >> 私は PayPal のサービスを使うのに直接に本人確認されたことはありません。
      >
      > PayPalの日本向けサービスはクレジットカード決済くらいしかサービスがないので、本人確認義務はありません。PayPalは送金サービスは日本では行なってませんので。

      現在は、ですよね。以前は PayPal で個人間送金ができたと思います。PayPal は(まだ)資金移動業の登録をしていないという話が下の方のコメントで出ています。とりあえず関東財務局への登録19社の中には…見当たりませんねぇ。

      本文を書いた後で、犯収法施行規則3条にクレジットカード会社経由で本人確認する方法があることを見つけました。PayPal はこれを使えば本人確認できそうです。ならサービスすれば日本市場を取れるのに…なんでやらないんだろ。

      >> 最後についてはもっともだと思います。それと同時に、立法者側にイノベーション創出という視点がもっとあればなぁと思います。
      >
      > そういうことを言っていたのではなくて、事業者側にもっと法を読み解く力が必要だということです。

      そのご主張は理解していますって (^^;;

      > 本人確認一つとっても安価にできる方法がいくらでもあります。

      同じ法規制の下で、アイディア次第でより安価な方法がある可能性は常にありますし、それを見つけるのが起業家の仕事だと思います。私は、日本でサービスが不可能だと言っているのではなく、相対的に(例えばアメリカなどに比較して)障壁が高いと言っているのです。本人確認についてはもともと世界的な組織犯罪対策として出てきていますのでアメリカと共通としても(しかし日本は主権国家ですから自前の法体系デザインが可能だしそうしていくべきと思う)、為替の原則禁止については大きな障壁と言ってよいと思います。(下の方のコメントのやりとりで私の考えは明らかと思うので、すみませんがここでは割愛します)

      で、障壁が高ければ、例えばより多くの資金を調達しなければならなかったり、あるいはおっしゃるようにグレーなところを白と言い切る法令遵守リスクを取らなければならず、それが(比較において)スタートアップを阻害するので、同じサービスができにくく、(*不可能*ではなくて)*遅れ*となる。だからクレジットカードも PayPal も、最初に現れたのは日本ではなかった。それが私の見方です。

      こう私が考えるのは、日本人だって、他の国で事業を興す革新的な人々と同じくらい創造的だと信じているからです。私は、日本人がおしなべて「法規制が厳しいからサービスできない」と言う人間だとは全く思ってません。そういう人はそもそも起業家ではない。

      ですが現状として法規制が厳しく、それが比較においてスタートアップを阻害していることは間違いないと思います。だから我々がやるべきは、起業家はもちろんアイディアを考え努力しサービスを実現する、それと同時に、皆でよりよい法規制を設計していく、この2つだと思うのです。このエントリーは後者を伝えるためのものですが、もちろん前者を否定するつもりは毛頭ありません。

      > 法律が厳しいからサービスできないだから日本はダメなんだという子供の泣き言にしか聞こえません。

      これは応援の言葉と受け取っておきます。ありがとうございます (^^)

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  2. では、ameroadについてどう思われますか?

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    1. 飴ロード、これですか。面白いですねぇ

      http://togetter.com/li/260260

      shingoym さんのコメント読んで、決済と為替の境界はどうなってるんだろうと考えてます。

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  3. 単に海外行って起業すればいいでしょ
    ネットの世界はこれは俺も思いついた・できたとか言って結局やらない奴ばかり
    これが日本で出てこない一番の理由

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    1. 私も海外に出ることは選択肢のひとつとして考えてますよ〜

      実装しやすいサービスと実装しにくいサービスがあります。法規制があればなおさら。それにマイクロペイメントは利益が小さいので、海外に出るコストは他のサービスより効いてきます。

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    2. 海外に行って起業する=日本で出てこない。

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  4. 海外で起業したら、それは海外発のサービスになるのではないかと。

    この記事は日本国内で新たなイノベーションが生まれない事を憂いてるのではないでしょうかね。

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  5. そうなんですよ〜

    日本で生まれ育った自分としては、日本が新しいサービスが元気にどんどん出てくる場所であってほしい。自分もその自由の恵沢(笑)にあやかりたい。

    でもそれができないのなら、個人的には海外に出ていくしかないんだろうなと。

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  6. kazutomiさん

    はじめまして。めしおと申します。
    はてなブックマークから来ました。

    シナプスはどうですか?
    http://synapse.am/

    試しに登録してみたのですが、違法なのでしょうか?

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    1. んー、私は法律は専門家ではないので…本文中に書いた通り、違法かどうかは法律家に聞いてもらった方がいいかと。でも少なくとも使う分に違法ではないとは思います。

      (こう書くと脱法を奨励しているように聞こえるけど、そうじゃなくて、利用者保護を目的とする規制を、利用者が守る必要ないと判断するのはありということ)

      ただ、グレーなところはいろいろありそうですし、そういうところから面白いサービスが出てくることが(法規制の強い日本では)多いのかもな、とは思ってます。

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  7. 現在でもPayPalは決済サービスを提供するのみで、個人間の決済(送金)は
    封印したままですよ。資金決済法に関する登録は何もされていません
    最近、日本でもよく名前を聞くようになったのは、決済サービス企業として
    営業を強化したためです。

    Gumroadについては、個人間の売買を仲介していると見るべきでしょうね。
    この場合は売り主は個人事業主として特定商取引法の対象となります。
    特定商取引法を遵守すれば、包括加盟店契約や第三者弁済などの形式で
    クレジットカード決済を提供することも可能と考えられますが、ビジネスで
    考えると個人の売り主としては面倒ですね。

    いずれにしても、Gumroadをあのままの形で日本で提供することは難しいと
    思います。

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    1. うーん、ちょっと不思議ですね。決済サービスは為替でやっていて、それこそ資金決済法の対象だと思うんですけど。販売やサービス提供など対価の給付があれば対象外なら、資金移動業者の仕事は寄附や贈与だけになってしまう気が…

      やはり決済と為替の境界はグレーかも。

      特定商取引法って、ネット商店のあれですよね。昨日皆さんから反応をもらって、じゃあ Gumroad が物を売っているならネット商店で、表示義務だの何だのが待ってるだろうとは思ってました。(条文、読んでみないとなぁ…。)

      前門の資金決済法、後門の特定商取引法、って感じだ(苦笑)

      削除
    2. クレジットカードなどの決済サービスは割販法によって規制されています。
      割販法の規制外である「コンビニ支払い」「代金引換」「携帯電話事業者の収納代行」が為替に相当するかは過去に金融庁のWGで議論されています。

      クレジット決済による決済サービスと為替の違いはご理解された方が
      よいかと思います。

      削除
    3. んんん? 私あてでしょうか?

      クレジット決済と為替は違いますよね。関連法規が違うし。それが明確に区別できなければ法が適用できない(けどグレーなところがあるかも知れないし、あればそこから何かが起きるかも知れない)。

      決済と為替の境界がグレーと書いたのは、例えば存在しない商品を取引して一括クレジット決済したら為替に相当するサービスができるとか、そういうことを考えたからです。もちろん法律や契約条件で禁止されてるに違いないとは思いますが。

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  8. 「日本は」を主語に持ってくるのであれば、海外との比較が欠かせないと思うのですが、海外の法律などが事例として出てきていないので、日本の法規制がどれくらい強いのかが見えてこず、根拠があやふやに感じます。

    記事では日本の法規制が強いために新しいサービスが出てこない、とありますが、実際のところ、アメリカと比較して、どれくらい日本の法規制は強いんでしょうか?


    レイプや近親相姦モノの書籍全削除をPaypalが電子書籍販売業者に要求
    http://gigazine.net/news/20120229-paypal-smashwords-censorship/

    「資金移動業者の登録はなんと、たったの19社です」と書かれてますが、上の記事のように、資金移動業者が、通販サイトの販売物の内容にまで口を出せるほど立場が強い状況を見るに、海外でもこの手のサービスで正常に稼動しているのは殆ど無いのではないでしょうか?

    となると、法的と言うよりは、もっと別の要因のような気がしてならないのです。

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    1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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    2. ありゃ、削除するとこうなるのか…見た目を直したかっただけなのに。

      えと、本文でも指摘しましたが、決済に関して日本でもっとも障碍になっているのは銀行法だと思ってます。原則として、為替取引は銀行にしか許さない。銀行法がと言うより、日本の経済体制に対する考え方がそうなっていると見ています。

      その裏返しとして、消費者側にも「銀行に金を扱わせれば安全、そうでないのは危険」という意識が持たれているようにも思います。

      この為替の銀行独占は、政府においてもよく問題として取り上げられているようです。

      内閣府:
      http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/0912_02/item080912_01.pdf

      経産省:
      http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g81023a04j.pdf

      金融庁:
      http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/dai2/siryou/20081010-2/02.pdf

      そして現実として、PayPal の個人間送金は明らかに為替取引をしていて、スタートアップ時に日本であれば違法だったはず。

      資金移動業者が取引を拒めるのは、私にはむしろ正常な状態だと思います。その方針が合わなければ使わなければよく、皆に使われなければ潰れますよね。

      利用者が何も考えずにどのサービスを使っても安全というのは理想で、日本はそれを究極まで追い求めようとしていますが、それを規制で強制するなら市場は機能しないしイノベーションも出てこないと思います。

      もちろん、法律以外にも原因はあるとは思います。起業しようとした一人の人間の視点から見たに過ぎませんので…

      削除
  9. 既に指摘されている方もいらっしゃいますが、本人確認は、マネーロンダリング対策のために行われています。これは911事件以降、国際的な課題となりました。
    おっしゃるとおり、「近年の日本で組織犯罪やテロと呼べることで大きな被害が出たのは、1997年のオウム地下鉄サリンくらい」かもしれません。また、今後日本国内においてテロ行為が行われる可能性は低いかもしれません。しかし、北朝鮮、シリア、イラン等への経済制裁措置が実施されている点を鑑みれば、マネーロンダリングにより、経済制裁措置対象者に資金が渡り、結果として日本国外において被害の重篤化・長期化を招く蓋然性が存在すると思われます。
    (もちろん、価値判断の問題ですから、日本のGDPへの影響や、日本国内の生活に必要な金の流れを阻害する点を、なお重視すべきであるという立場を否定するつもりはありません。)

    また、「日本において決済のイノベーションは原理的に起きない」との認識をお持ちのようですが、決済ないしそれに類似する機能を営む、Suica、コンビニ決済(収納代行を含む)、代金引換便、おサイフケータイ、モバイル決済、Edy、Gポイントなどは、どのように位置づけておられるのでしょうか。
    リンクされている「NRI:金融ITフォーカス2010年6月:金融×IT対談」中でも言及されていますように、そもそも資金決済法が検討された契機は、前払式証票規制法においてサーバ型の前払式支払手段が想定されておらず、規制対象になっていなかった点にあります。そうすると、資金決済法で規制されなかったポイント制度を含めて、2009年時点でイノベーションが生じていたようにもみえますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

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    1. 資金洗浄対策であることは存じています。お金の動きを監視すれば犯罪を防ぎやすいことも。改札での本人確認の喩えで取り上げました。でも、やり方だと思うのです。

      別の喩えですが、自動車を使った犯罪を防ぐのに、全ての国道と高速道路に常時検問は置きません。その代わりに通過した車のナンバーを記録する装置を使ってますよね。これは交通を妨げないやり方で、プライバシーとのトレードオフになってますけど、うまい落とし所だと思います。

      同じように、もし北朝鮮ほか海外の犯罪組織への金の流れを問題視するなら、外国為替だけを本人確認の対象とする手があります。そうすれば少なくとも内国為替の規制は緩くでき、イノベーションが起きやすくなる。

      組織犯罪を重視するとか無視するとかの一つの軸ではなく、いろいろな面(たとえば犯罪防止と決済の利便性の両面)でできるだけ最適な仕組みの実装はどういうものかを考えた方がいいと思うのです。安全ばっかり、保護ばっかりではなく。

      まあ一面的な実装は簡単で楽だから…

      Suica 他の位置づけですね。以下、あくまで個人的な見方です。ATM さんのコメントへのお返事にも書きましたが、日本の経済体制の基本的な原則は、為替は銀行にしか許さない、だと思います。それだけでなく、預貯金も、金融も。それに基づいて出資法と銀行法は定められたと思うのですが、そのときにはプリカや Edy やネット決済は想定されてなかったはずです。もしも想定されてたらどうだったか? きっと、それらもカバーできるように(つまり銀行が行うように)法律を作ったと思うのです。プリカ法でサーバ型が想定されていなかったので規制する、という考え方がそれを示していると思います。

      プリカの購入は預金と見ることもできます。Suica は為替をやっていると見ることもできる。でも罪刑法定主義の下では、明らかに違法でなければ処罰できない。だから、すでにあるサービスを追認しつつ規制するためにプリカ法を作ったのではないでしょうか。

      銀行が預貯金と為替を独占するという基本方針の下で、出資法と銀行法という実装をしたんだけど、その基本方針には反するが違法ではないサービス、つまり脱法行為としてプリカなどが現れたというのが私の見方です。もしもそれが脱法行為でないなら、後付けでこんなに強力に法規制するのはおかしいように思うのです。

      基本すべて禁止という条件のもと脱法行為でイノベーションよりは、基本すべて自由ただし危険なサービスが禁止されているところでイノベーションの方が、私はいいなぁ、と…

      んー、つい長くなってしまいます (^^;;

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    2. ご返答どもうありがとうございます。

      ご承知のとおり、資金洗浄においては、転々と送金していき、出所を隠蔽するのが古典的な手口となっています。「外国為替だけを本人確認の対象とする手」をとり、国内送金の本人確認をしないとなりますと、このような古典的手口にすら対処できなくなるという欠点が生じます(AB間の外国為替のみを監視対象としても、AがCから国内送金を受けている場合、Cによる出所隠蔽が可能となるという意味です)。
      また、現状では口座開設時など取引開始時に本人確認を求め、資金移動の都度本人確認を求めるという運用をしていないと思われます。口座の乗っ取りなどを想定すれば、取引ごとに公的な証明書をもって確認をとる方が資金洗浄対策という目的を達する上で十全でしょうが、そうはなっていないという意味において、利便性も(kazutomiさんにとってはご納得できない範囲でしょうが)一応考慮されているといえます。

      「組織犯罪を重視するとか無視するとかの一つの軸ではなく、いろいろな面(たとえば犯罪防止と決済の利便性の両面)でできるだけ最適な仕組みの実装はどういうものかを考えた方がいい」という点はおっしゃるとおりです。資金洗浄対策にともなう本人確認というのも、そのバランシングについての一例として提示しただけであり、その他にもこのような「一面的な実装」がたくさんあるという意図があるかもしれません。
      しかし、上述のように立法者も(一応)トレードオフや負の外部効果を想定しつつ、価値判断を下しています(もちろん、既存金融機関など「既得権益」層とうつるであろうアクターの政治的圧力に晒されてバランスが崩れているという面も多分にあるでしょうけれど)。「安全ばっかり、保護ばっかり」をしているわけでは(少なくとも立法当事者の意識としては)ないのだと思います。
      そうすると、総論においては、立法者とkazutomiさんの間に一致がありるということになります。価値判断の感覚や重視しているポイント(各論部分)が、kazutomiさんと立法者との間でかなり異なっているだけということになるのではないでしょうか。

      さらに、このあたりの価値判断の違い、kazutomiさんの違和感の原因というのは、うまく整理できませんが、金融という文脈によるのではないかと思います。
      他分野(たとえばIT関係)にくらべて、金融関係は法制度やビジネスモデルを含めて、信じられないほど保守的だと感じておられるのではないでしょうか。「金融業のあり方を国が考える」ということも(たとえば、杉浦先生つながりで、http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/w_group/siryou/20120111.htmlなどを参照)感覚として受け入れ難いところがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。


      次に、Suica 他の位置付けについてですが、「その基本方針には反するが違法ではないサービス、つまり脱法行為としてプリカなどが現れた」、「基本すべて禁止という条件のもと脱法行為でイノベーション」とおっしゃられていることからしますと、(脱法的ではあるものの)「イノベーション」として位置づけていると理解してもよろしいでしょうか。
      そうすると、「日本において決済のイノベーションは原理的に起きない」というのは語弊のある(真ではない)表現だったということになります。(おそらくkazutomiさんのとしては、原則禁止より原則自由という状態の方がイノベーションが生じやすく望ましいという趣旨だったのではないかと推察します。)
      Suica等がイノベーションだったとすれば、それを可能にした要素を検討することも、あたらしいサービスを企図する上で重要ではないでしょうか。


      最後に、非常に些末な点で大変恐縮ですが、金融業は銀行のみが行っているわけではありません。また、(従来規制されていた)前払式証票は、商品券、ギフト券、テレホンカード、プリペイドカード等であり、発行主体が銀行にかぎられていたわけでもありません。
      加えて、「サーバ型が想定されていなかったので規制する、という考え方」についてですが、「銀行などに決済業務を独占させたい」という発想ではなく「発行主体が倒産したら、どうなるか」を議論するためにスタートしています。

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    3. あ。「どもう」になってしまいました。
      「どうもありがとうございます」の誤りです。すみません。

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    4. おお、確かにそれだと外国為替だけ抑えてもダメですねぇ。でもまだ私が何か見落としている気がするので、ちょっと考えてみます。ただ、どんな状態でも、それより悪い状態を想定すれば、より利便性が考慮されていると言えますよね。誰かから教唆されて送金している可能性も考えれば、取引ごとの証明でも不十分になります。それに比べれば、取引ごとの証明で済ませるなら利便性が考慮されている、と言えます。

      銀行が行う為替取引でも、確か10万円以下の振込では本人確認が不要だったと思います。そうであれば洗浄したい資金を10万円に小分けして送金する資金洗浄が銀行を使っても可能です。少額振込を本人確認なしで許すのは、そのような手法での資金洗浄は大金を一度に振り込む場合より摘発あるいは防止しやすいという考え方のためと思います。ところで資金移動業者に許されているのは10万円以下の少額の為替取引だけで、大金を一度に送金する資金洗浄はできません。他方、銀行口座の乗っ取りや名義貸しなどを考えれば、銀行を利用する方がより資金洗浄が容易です。そして、資金移動業は新しいサービスで、これから伸びていかねばならない分野です。しかしながら、資金移動業で受け取り側に口座を持たせる場合には、銀行の場合と同じように本人確認が要求されます。
       
      つまり、銀行のほうが、より資金洗浄に利用される危険が大きく、よりイノベーションが不要(比較すると確立されたサービス分野)なのに、本人確認の水準において銀行と資金移動業がまったく同じ(と言っていいと思います)であるのは、バランスを欠いてないでしょうか。

      同様のことは、資金移動業者は基本的に送金途上のお金を全額持っていなければならず、加えて一定以上の純資産額を要求されるのに、銀行は何十兆円もの預金残高に対して(貸出金残高の)数%の自己資本比率でよいという差にも言えます。ま、ここは信用創造が関わるので、銀行は特別だってことに結局なるのかも知れません。(ならば便利なネット決済サービスを提供するのは銀行の義務じゃないの、と今度は言いたくなる。そんな制度は嫌だけど。)

      で、どうも私がうまく伝えられなかったようですが、前の私のコメントで例として挙げた「犯罪防止と利便性の両面から最適」の意味は、ある極では犯罪防止のみで利便性ゼロ、反対の極では利便性最大で犯罪防止はザル、ではその間のどこをとるかというバランスの問題(たぶん価値判断の問題)*ではなく*、例えば同じ犯罪防止効果を持ちつつ利便性が上がるような実装という意味です。

      素人の私が、見えている範囲でですが、現在の法の制定や改正のアプローチは、禁止・本人確認・資産額・取引額上限・登録認可か届出か・どの程度の書類を要求するか、という選択肢をオン/オフすることで規制の程度をコントロールしようとしているように見えます。このやり方は、規制の程度という「一つの軸」上で問題を扱っていて、その軸上の価値判断だけによって、無限に可能性のあるサービス形態の可・不可が決められてしまいます。

      あるサービス形態では本人確認を緩めてもいいかも知れないし、また別の形態では資産額が低くてもいいかも知れない。それは分かりません。(それが分からないというのが自由主義の前提だと思います。)例えば一度の送金額が1000円以下だけを扱うサービスなら、本当に純資産が一千万円必要でしょうか。

      私が思う大きな問題のひとつは、立法するときに立法者が特定のサービス形態を想定してその上で規制の強さを設計し、規制を満たすもののみを許可するやり方をとっていることです。どんなに役に立ち十分安全なサービスでも、法がすでに許していなければ「お金を預かってはならない」(出資法)「為替を提供してはならない」(銀行法)。これでは、利用者にとって有効かつ安全であるにもかかわらず形態が合っていないものは禁止されてしまいます。

      そうではなく、人知では全てを想定できないので、分かっている特定の*害のある*サービス形態を禁止するにとどめるべきじゃないかと思うのです。

      例えるなら、浜で潮干狩りをするときに、浜から沖に向かって一本のレールを引いて、そのレールのここからあっちは波が危ないから行っちゃダメ、こっち側のレールの上で貝を探しなさいって言われてるようなものです。いやいや、横の方のあのへんにいい貝があるかも知れないだろ、と思っても、レールから外れられない。

      金融については詳しくないですし、示していただいた資料も発表スライド的なもので、その分野の考え方がどのようなものかはちょっと分かりません。保守的であることは基本的にはよいことだと私は思っています。保守的なやり方には経験と先人の知恵がよく含まれているので。そして、変革の方に理があれば変革はよいことだと思っています。

      立法は国を治める手段で、国は何のために治めるかと言うと、例えば国民の幸せのため、そして広く人々の幸せのためだと思います。立法はそのための手段の一部でしかない。資金決済サービスを例に取れば、日本が高度経済成長をしていて決済サービスに特にイノベーションが必要ない時代は、規制を強めて資金洗浄を取り締まればよかったでしょう。でも今は状況が違う。日本だけでなく多くの国が不況に苦しんでいて、とにかくお金を早く回さないと食えない人、死ぬ人が出る(出てる)、そういう状況だと思います。こういう状況と無関係に、「安全」で「便利」な資金決済サービスはあり得ないでしょう(必要な「安全」と「便利」の水準が状況によって規定される)。

      もしも金融分野が保守的だという言い方ができるのなら、それは状況に応じないということなので、それでは国政の一部としておかしいとは思います。

      念のため書きますけど、私は立法者が何らかの悪意を持って法律を作っているとは全く思っていません。それどころか大変なご苦労をされていると思っています。そして、価値基準や重視する部分が人によって違うことも当然だと思っています。しかし、もしも我々皆が、自由の有効性を(憲法にあるように)信じ、その恵沢を得たいと思うなら、上に書いたような「原則禁止、特定のものだけ許す」という基本方針はおかしいと言い切れると思います。

      Suica などについては、はい、脱法行為だけどイノベーションと思っています。本文にもそのように書いています→「日本において決済のイノベーションは原理的に起きないと思う。起きるとすれば、脱法行為か、海外から来るかのどちらか。」そして、原則禁止よりも原則自由の方がイノベーションが起きやすいと私が思っていることも、その通りです。多分、J. S. ミルもそう思ってます(笑)。

      Suica 等のイノベーションを可能にした要素を検討するのも、おっしゃる通りイノベータにとっては重要だと思いますが、それは本論を外れます。もしも出資法や銀行法が Suica 等のイノベーションを後押ししたというなら別ですけど。

      金融業は銀行以外もやっていること、存じています。法律の条文にあるあの長いリストを挙げたくなかったので銀行に代表してもらいました。プリカを銀行以外が発行していたことも、そして変な業者が残額大量に抱えたまま倒産して問題になったことも知ってます。

      そして最後の点ですが、銀行などに決済業務を独占させたいから資金決済法を作ったとは思っていません。ほとんど繰り返しになってしまいますが、サーバ型が有効なサービスとして脱法的に発生したので、その業務形態を追認せざるを得ず、そのために(倒産時の対処含めて)法改正した、というのが私の見方です。そしてもし銀行法制定当時に、サーバ型の決済サービスがまだ実際に現れておらず、しかし立法者によってそれが可能だと理解されていたなら、サービス形態を明示せずに銀行法の枠内に収まるように条文が書かれたと推測します。なぜなら、資金決済法の「預り金の原則禁止」、銀行法の「為替の原則禁止」がまさにそれをやっていると思うからです。

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  10. PayPal日本、個人間送金できますよ

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    1. システムとして出来てしまうことと「できる」ことは違います。
      https://www.paypal.com/helpcenter/main.jsp;jsessionid=nRpZPTTZnq3qj5syF2pRmLzwlyTfHzly2xQBJXznGbYGhvllhQkv!966957051?locale=ja_JP&_dyncharset=UTF-8&countrycode=JP&cmd=_help&serverInstance=9008&t=solutionTab&ft=searchTab&ps=solutionPanels&solutionId=1206192&isSrch=Yes

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    2. 個人間送金、同じ銀行口座を持っていれば、やっていて、海外との送金も普通にpaypalでやっているけれど、いけなかったの?

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  11. 確かに大きなテロと言えばオウム教団の一連の事件ぐらいですよね(地下鉄サリン事件は'95年です)。安全を名目に過剰な規制をかけるのは、日本のあちこちでよくある事。それで企業がつぶれた例は枚挙にいとまがありませんからね。

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    1. そうでした…>1995年。訂正しました。

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  12. はじめまして、ガジェット通信編集部の永吉と申します。

    私どもは、『ガジェット通信』というウェブ媒体を運営しております。
    http://getnews.jp/

    こちらのブログ記事を興味深く読ませていただきました。

    突然で恐縮ですがこの記事を、『ガジェット通信』に寄稿という形で掲載させていただきたいのですがいかがでしょうか。

    掲載の際には、表記統一などのために、若干の修正をさせていただく
    場合がございます。また、元記事へのリンクも貼らせていただきます。
    ポータルサイトへの配信もございますので、
    ご検討いただき、下記アドレスへお返事をいただければ幸いです。

    post2009<アットマーク>getnews.jp

    ご検討何卒よろしくお願いいたします。

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    1. 興味を持って下さりありがとうございます。メールでお返事致します。

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  13. ameroadはすごいよすごい。
    でも
    日本の法律では、違法であることを知ってサイトを立ち上げたなら、起訴、知らずに立ち上げたなら起訴猶予、運用者についても同様。
    裁判所が判断。
    しかもその立ち上げ者が日本以外の国で立ち上げればOK.
    運用者も日本以外にいて運用していればOK.
    日本は一度法律を作ったら、憲法と同じように変更が出来ない国。
    このまま終わるのさ。
    さっさと海外に移住するのがいい。

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  14. 出来ないことを考える < 出来ることを考える < 出来ることをやる

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  15. 現在、海外向け購入型クラウドファンディングサイトを立ち上げ準備中なのですが、paypalの決済システムの使用許可が下りません。他の購入型クラウドファンディングサイトでpaypalを使っているサイトはいくつもあるのに。。。。理由を聞くと、「日本の法令ではクラウドファンディングサービスにペイパルの決済システムを使用するのは無理だ」の一点張りです。私の企業信頼度の問題でしょうか?海外向けなので、ペイパルを使いたいのですが。。。

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    1. うーん、PayPal 内部のこととなると、何とも分かりませんねぇ…法律に関しても私は素人ですし。資金決済法と出資法くらいの範囲だと、投資型のクラウドファンディングと思われてる、くらいしか思いつきません。

      すみません、お役に立てなくて。IT系のコンサルタントか法律専門の方にご相談されて下さい (_ _)

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    2. コメントありがとうございます。ちなみにどの法令が適用されるのか?と聞いても、「それは社内機密なのでお教え出来ません」との回答でした。なんとか方法を考えたいと思います。ありがとうございました。

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  16. こちらの記事とコメントを興味深く拝見しておりました。
    購入型クラウドファンディングサイトの立ち上げは、その後どのようになったのでしょうか?

    こちらの記事が書かれて1年経ちましたが、なかなか日本からgoogleやpaypalのようなサービスが出てこないのは、当時このような理由があるのかと関心させられました。

    でもよくよく考えるとgoogleも最初はコンテンツを無断で収集していることが問題になっていましたが、ある程度必要性があると分かると、例外扱いになったということを考えると、結局は人のさじかげんひとつなのでしょうね。

    個人的にはパブーやhopp、ユグドア等が成長すると面白いかなと思います。


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  17. さらに一年経ちました… (^^;;

    法的にグレーなところに面白いサービスは出やすくて、それに白黒つけるときに有用性とか既得権益とかが絡んでくる、という感じでしょうかね。

    面白いサービスを提供したいものです。

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  18. 本ブログ記事、拝見いたしました。
    とても興味深い内容ですね。

    ブーケミーというサービス(http://bouque.me/) は、以下リストより、資金決済業協会の一種二種には加盟していないようです。
    http://www.s-kessai.jp/about/member_list.html
    結果、届け出もしていないのかなと思いますが、大丈夫なのでしょうか?

    グレーなところなのでしょうか?

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    1. サイトをちょっと見てみましたが、「ギフト」の対価としてお金をもらうという形にしているので、資金移動ではない、ということなんでしょうね。

      「ギフト」が完全に有名無実ならまずそうですが、たいていは披露宴への参加費用とできそうなので、大丈夫なのかも。

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    2. ブーケミーのビジネスモデルというか仕組みはクラウドファンディングの購入型になりますね。
      ブログ主さまがご指摘の通り引換券を販売するという形になるのでネットショップと同じ形態になるかと思います。
      だから特定商取引法の表示がされているのだと思いますよ。

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    3. なるほど、やはりそうでしょうね。

      何かまあ、面倒ですね (^^;;

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    4. 個人的にはクラウドファンディングの購入型もやっていることは個人間の送金サービスに他ならないと思います。
      「引換券」を挟むことで資金決済法を上手くすり抜けている、という印象ですね。
      確かに面倒臭そうですが、資金移動業者として登録した上に供託金を積む労力を考えるとこちらの方がはるかに楽だし、効率的ですね。

      誤解を恐れずに言えば、ハードルの高い資金決済法に真っ正直に向き合った事業を考えるより、法や規制に触れないで上手く立ち回れる方法を考えた方がいいのかもしれません。

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    5. 規制のもとで事業をする側からすると、そうなりますかね、やっぱり。

      逆の視点から、規制をデザインするのも難しいなぁと思います。

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